木造建築の課題を技術と工夫で克服。
枠にとらわれないデザインが生徒の心に響く武道場。
株式会社 田村設計室
代表取締役 田村 幸彦 氏
木造建築の課題に、拡張樹脂アンカー工法で対応。
横浜市がプロポーザル方式で選んだ建築士によって設計し、建てられた木造平屋建ての武道場(延面積 約388m²)の外壁に「FLAT DESIGN PANEL」と「LAP-WALL」を、屋根に「コロニアル遮熱グラッサ」をご採用いただきました。設計をご担当された株式会社田村設計室の田村氏に、公共施設の設計におけるポイントや、木造建築の課題にどのように取り組まれたかをお伺いしました。
横浜市からの依頼内容は、全木造による武道場の新築でした。大規模な木造施設を建てる場合には、法規制やコスト、構造・施工方法など、様々な課題をクリアする必要があります。そこで、一般流通木材を全ネジボルトとエポキシ樹脂で繋ぎ込む「拡張樹脂アンカー工法」を採用しました。本工法を推した理由として「大スパンの木造建築を実現できる」「規格品の木材を使用でき、コストを抑えられる」「メカニズムが比較的簡単で、工期を短縮できる」などのメリットが生まれるためです。また、木材は静岡県産や神奈川県産を使用しており、地域産業の振興や、地産地消にも貢献しています。
「現代和」をコンセプトに、学校の枠にとらわれない外観。
武道場なので「和」をイメージした外観デザインを考えていました。公共施設、特に学校などの教育施設ではベージュ色などの淡色がよく使われる傾向がありますが、本案件ではあえてシックな色合いで、硬質な素材感を持つ「フィエルテ」 を使うことで、生徒さんに「この武道場は何か違うぞ」と意識してもらうことを狙っています。また、建物の中心部分に日本の伝統的な菱文様をイメージさせる「LAP-WALL ヒシ」を張り分けることで、現代的な和を表現しています。学校の先生からは「生徒が、新しい武道場を大切に使っている」と喜んでいただいています。
美しさと快適性を兼ね備えた、印象的な切妻屋根。
屋根は平部の途中で折りがはいったデザインを採用し、現代的な和を表現しています。屋根材には太陽熱を反射して、建物の蓄熱を抑える「遮熱グラッサ」を選び、生徒さんが快適に運動できる屋内環境づくりを目指しました。さらに、断熱材の外側に通気層を設けて空気を流す通気構法を採用し、夏場の小屋裏温度の低減を図っています。
「脱炭素社会」実現に向けて、木材を利用していく取り組みが注目されていますが、一方で木材は燃えやすいとのイメージや、構造計算や施工が難しいと感じている方も多くいらっしゃいます。しかし、工夫次第でこれらの課題を克服できると考えています。