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暮らしのアイデア
【第1回 新素材探検「フローリング」編】フローリングは機能で選ぶ!?
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昔と同じように見えるものも、今ではまったく新しい素材や技術が詰まっていることがあります。シリーズ連載企画「新素材探検」は、暮らしや世の中のニーズに合わせて進化している身近な商品やプロダクトを取り上げ、新しい素材やそれを支える技術についてプロの方たちにお話しを伺う連載企画です。第1回目は、住まいのなかでも触れることの多い「フローリング」。第一線でフローリングの開発を行うパナソニック ハウジングソリューションズの堤文生さんに、最新のフローリングの技術開発についてお話を伺いました。
木質系フローリングは、大きく分けると4種類
インテリアを決める要素とし、フローリングはとても大事だと思います。まず基礎知識として、フローリングにはどんな種類があるのか教えてください。
堤さん:木質系フローリングは、仕上げで大きく分けると「無垢材」「挽き板」「突き板」「シート」の4種類があります。無垢材は、製材した木材をそのまま使用したもので、木の風合いや表現性はもちろん高いのですが、希少な材料なので自然環境への負荷が大きくなってしまいます。そこで基板となる合板に薄くスライスした板を貼り込んだ複合フローリングが、いまは主流になっています。「挽き板」は厚さ約2mm、「突き板」はさらに薄く厚さ0.2∼0.3mmにスライスした板を貼り合わせています。「シート」は、木目柄を印刷したシートを貼ったもので実際の天然木ではありませんが、その分、木目や色柄のコントロールがしやすく、インテリアのトレンドやお客様の好みに合ったものを選ぶことができます。
“暮らし方”で選ぶ、ペットや小さなお子さんのいる家庭におすすめのフローリング
色や柄の違いはわかるのですが、それ以外にフローリングを選ぶ際のポイントはあるのでしょうか?
堤さん:いまは色や柄、素材感などのデザインが豊富に揃い、お好みのインテリアに合わせてフローリングも選ばれるようになってきましたが、パナソニックではそれら以外に、暮らし方や性能でフローリングを選ぶことをご提案しているんです。
暮らし方や性能で選ぶというのは、具体的にどういうことでしょうか?
堤さん:室内でペットを飼うご家庭が増えてきたことを受けて、床の上での生活を安心して楽しめるように、ダニの死骸や花粉、イヌやネコのフケなど床面に付着したアレル物質を抑制するアレルバスター配合塗装の床材を展開しています。
フローリングにそんな機能があるんですね。どういう仕組みになっているのでしょうか?
堤さん:フローリング表面に施された塗装に秘密があるんです。日中、空気中に浮遊していた花粉やフケなどのアレル物質が、人の動きが少ない夜になると床面に落ちてきます。それがアレルバスターを配合塗装した床に一定時間触れることで、アレル物質を抑制することができるんです。
業界初「抗ウイルス」「抗菌」「アレル物質抑制」。
3つの性能を兼ね備えた「トリプルガード」
すごいですね。これならペットを飼っている方も小さなお子さんのいるご家庭も安心できますね。他にもフローリングの性能に関わる開発はされているんでしょうか?
堤さん:近年、新型コロナウイルスの懸念が広がるなかで、抗ウイルスや抗菌とった市場のニーズが高まっていました。そこで塗料メーカーと新しい技術開発に着手し、試行錯誤を繰り返した結果、通常の半分の開発期間で「抗ウイルス」「抗菌」「アレル物質抑制」という3つの性能を兼ね備えた「トリプルガード」の床材を完成させることができたんです。
トリプルガード!なかなかイメージしづらい高度な技術ですが、開発にあたってはどういった難しさがあったのでしょうか。
堤さん:簡単にいうと「抗ウイルス」「抗菌」「アレル物質抑制」性能をもつ物質すべてを塗料に練り合わせるのですが、なにしろ業界では初めての試みで、3つの性能を保持させながら床材の塗料としてモノづくりの製造工程を確立するまでは試行錯誤の繰り返しでした。自信作なので、ぜひ広く安心して使っていただきたいと思っています。
天然木の魅力を最大限に引き出した突き板仕上げ「マイスターズ・ウッド」
一時期は、無垢材のフローリングが流行っていたような気がしますが、最近は「マイスターズ・ウッド」のような天然木の風合いを生かした複合フローリングを採用しているケースが増えてきていると思います。その間、どのような変化があったのでしょうか?
堤さん:無垢材は、製材した木材をそのまま使用したもので、木の風合いや表現性はもちろん高いのですが、希少な材料なので自然環境への負荷が大きくなってしまいます。そこで、基板となる合板に薄くスライスした板を貼り込んだ複合フローリングが、いまは主流になっています。
無垢材の方が、複合フローリングよりも価格も高くなるのでしょうか?
堤さん:そうですね。最近ではウッドショックなどの影響もありますから、価格の上でも割高になりますし、材料の調達からみても無垢材は環境に配慮した材料とは言い切れない面もあります。ですからパナソニックでは、貴重な天然木を「無駄なく使う」ことができる「突き板仕上げ」のフローリングに力を入れています。表面に貼る突き板のスライスをできるだけ薄くしながら、天然木のもつ魅力を最大限に引き出したのが「マイスターズ・ウッド」というシリーズです。
「マイスターズ・ウッド」の特徴について伺えますか。
堤さん:「マイスターズ・ウッド」の突き板は、表面の木目を強調するためにエイジング技術という特殊な水熱処理をおこなっています。エイジング技術を活用することで木目が際立ち、色の領域を広げ、天然木のもつ照り感を表現することができるようになっています。さらに、これまでは仕上げの段階で着色をして表面の意匠性を整えることが一般的だったのですが、「マイスターズ・ウッド」では、天然木の意匠を最大限に生かすために、着色をせず、表面をクリア塗装で仕上げています。樹種によって全く表情が変わってくるので、より木の魅力を味わうことができるんです。
「マイスターズ・ウッド」と「トリプルガード」。見た目と性能を兼ね備えた最新鋭の複合フローリングですね。最後に、堤さんが考えるいい床材、いいフローリングというのはどういうものでしょうか?
堤さん:一言でいうのは難しいですが、時代にあわせてお客様のニーズも変化し、多様化していきますが、家や床は頻繁に買い換えるものではありません。やはり10年、20年と何も不具合が起こらず、安心してご使用いただける品質をもった床材がいいんだろうと思いますし、それが商品開発を行う上でも目指すべき姿だと考えています。先ほど例に挙げましたが、新型コロナウイルスが猛威をふるう最中に「抗ウイルス」性能に着目して、短期間で塗料メーカーと技術開発を行いました。パナソニックの強みであるこうした技術力を生かして、これからも商品開発に取り組んでいきたいと思います。