1. TOP
  2. 記事一覧
  3. 【暮らしにキャンプを。#2】キャンプは、「脳のリハビリ」
  • 暮らしのアイデア

【暮らしにキャンプを。#2】キャンプは、「脳のリハビリ」

  • #グランピング
  • #キャンプ
  • #グランピング施設

都会を離れて地方に移住し、自らキャンプ場を営みながら暮らす人たちも少しずつ見かけるようになってきました。南アルプスの麓、山梨県北杜市でグランピング施設「FLORA Campsite」を運営する安納恵さんもその一人。オシャレで快適なグランピングの楽しみ方はもちろん、あえての不便さを提案しキャンプや自然の魅力を体感して欲しいと話す安納さんの案内で「FLORA Campsite」の魅力をご紹介します。

キャンプの煩わしさをできるだけ解消して
気軽に楽しんでもらいたい

グランピングサイトのテントには、ストーブ、こたつ、冷蔵庫などを完備。すっきり広く見えるように高さのある家具や柄の入ったファブリックは使わないようにしています

安納恵さん。幼い頃から、旅行と言えばキャンプという家庭で育つ。田舎暮らしをしたいという父に賛同し、結婚式を挙げた3カ月後に、両親・妹とともに山梨県北杜市に移住。山を切り拓き、6年前にグランピング施設「FLORA Campsite」をオープン。現在は、ご主人(毅さん)も合流し、2人の子どもを育てながら家族で運営。初心者でも気軽に快適なキャンプが楽しめるグランピング施設として人気を集めています

「私自身の経験でもあるんですが、家族で1泊2日のキャンプに行くとなると、土曜日の朝早くに出てまず渋滞にハマリ、現地では設営と撤収でヘトヘトになって、帰りは帰りでまた渋滞につかまって、帰宅後は濡れたテントや寝袋を干したり、片付けたり。自然の中で癒されにキャンプに行ったはずなのに、一体何をしてるんだろうって(笑)」。そうしたキャンプの煩わしさを解消しつつ、純粋に自然の中のキャンプを楽しんでもらえるように「FLORA Campsite」のグランピングサイトには、ベッド、ラグ、こたつ、冷蔵庫、サーキュレーター、調理器具に調味料とあらゆるものが用意されています。つまり、何も持たず、手ぶらでキャンプをすることができるのです。「誰でも気軽に自然の中にやって来て、焚き火をしたり、自然の中でご飯作ったり。まずはキャンプが楽しいものだと知ってほしい、それがわたしの目標で、一番嬉しいことです。そうした宿泊体験が、たまたま『グランピング』というカテゴリに近かったのかなと思っています」

包丁やおたま、鍋やフライパンからガスバーナーまで、調理道具やカトラリー一式が取り揃うので、食材だけ持ち寄って後は手ぶらでキャンプに来ることができます

オシャレで快適なグランピングと
不便を楽しむキャンプの魅力を一緒に味わう

キャンプらしさにこだわって、アウトドアコットの上に寝袋をセット。クッションやピローもあるので、ソファ代わりに寝転がることもできます

「オシャレで快適なグランピングの楽しみ方はもちろん、あえての不便さを提案しキャンプや自然の魅力を体感して欲しい」と話す恵さん。グランピングサイトを訪れるお客さんが何度来ても楽しいようにと、季節によってインテリアを変えるなど細部まで気を配っています。「でも、キャンプといったらやっぱり『寝袋』なので、ベッドは置かず、アウトドアコットの上に寝袋をセッティングしています。寝袋専用のシーツもあるので、清潔で暖かいと評判なんですよ」。さらにキャンプといえば、地面との距離感や身近さも大切。そこで通常のグランピング施設のようにウッドデッキを敷いてその上に木製フレームを組むアウトドアリビングのようにはせず、あえてポールを立ててタープを張るだけのキャンプ仕様に。調理道具などは充実させつつも、収納家具にこだわると「ふだんの家のようになってしまうので」と、あくまで非日常のキャンプ気分が味わえるようにこだわっているといいます。

寝袋用のインサートシーツは、『FLORA Campsite』のオリジナルでつくってもらったものでロゴも入っています

着火剤はできるだけ使わない。手間のかかる
火おこしへのこだわりとは

枯れて水分が抜けた杉の葉っぱは、着火剤を使わない焚き火の火おこしに重宝します

「寒くなってきたので、そろそろ雑木林に行きましょうか」と恵さん。バケツを持って、焚き火に使う材料を探しにいくのだといいます。恵さんが不便なキャンプを楽しむという意味で、一番こだわっているのが火おこしです。「以前3、4歳の小さなお子さんのいるご家族がいらっしゃったんですが、自宅がオール電化住宅でガスコンロもなくIH。だからお子さんが火を見るのが初めてと聞いてびっくりしました」。自宅ではできない体験をしてもらうこともキャンプの大きな魅力の一つだという恵さん。焚き火の材料となるのは、松ぼっくりや枯れて落ちた杉の葉っぱなど。「皆さん、下ばっかり見るんですけど、見上げて木の種類を見極めた方が、じつは見つけやすいんですよ」。落ちた葉っぱや小枝を拾ってきて、ファイヤースターターで火を付け、燃えやすい葉や小枝からだんだんと太い枝や薪などを組んでくべていきます。「着火剤を使わないのが一番のこだわりです」。火のおこし方ひとつとってもわかるように、キャンプでは何でも揃っているわけではないから、段取りがとても大事。うまく行くと、達成できた充実感で自然と笑みがこぼれ、最初は抵抗のあったお客さんも「キャンプが好きになった」という声を聞くことも多いといいます。

左上/焚き火の材料に拾ってきた、松ぼっくりや枯れて落ちた杉の葉っぱ、小枝など
右上/麻紐をほぐし繊維状にして火がつきやすいように
左下/ファイヤースターターで擦った火花を麻に点火させます
右下/燃えやすい枯れ葉などで火種をつくり、小枝を組んで火が安定してきたら、太めの枝、薪などをくべます

キャンプは、焚き火が思う存分楽しめる
秋冬こそが本番

キャンプシーズンというと、ゴールデンウィークや夏休みに家族で行くというイメージが強いですが、キャンプ好きやソロキャンプを楽しむ本格派にとっては、じつは秋から冬が本番だといいます。「キャンプの醍醐味は、やっぱり焚き火。夏場ですと夜も暑いですし、虫も多い。防寒さえきちんとできていれば、秋冬の焚き火が一番。星も綺麗ですしね。それに『FLORA Campsite』には、冬場はこたつを準備して、鍋を囲んで楽しむ方も多いんですよ。これから年末にかけては、忘年会で利用される方もいます」

時折、火吹き棒で中心に空気を送りながら焚き火の炎をコントロール。秋冬は、防寒用に薪ストーブも併用し、その上で燗酒や鍋料理なども楽しめます

最後に、キャンプの一番の魅力について恵さんに聞いてみると、少し意外な答えが返ってきた。「わたしはキャンプの一番の魅力は『脳のリハビリ』だと思っているんです。自然に触れて気持ちをリセットすることはもちろんですが、ふだんと違って材料や道具も限られていたり、キッチンが外に移動しているだけなのに、焚き火にこだわって、バーナーの存在を忘れていたりとか何をどう使っていいか分からなくなるお客さんもいて」。そういうお客さんには『まず今日は何をつくる予定ですか?』と聞いて、アドバイスすることも多いそう。こうしたあえての不便さ楽しむ非日常と家族経営だからこそできるアットホームなおもてなしが「FLORA Campsite」の大きな魅力になっています。

「FLORA Campsite」で、いま押している富士山の溶岩を加工したプレート。お肉の火通りもしっとりジューシーに仕上がります。藤岡弘のYouTubeを見て「点滴を入れるように滴らせるコーヒーの淹れ方」にハマっているという恵さん

施設情報

FLORA Campsite in the Natural Garden

住所 山梨県北杜市白州町白須8813-2
電話 0551-45-9164(水曜日を除く17:00まで)
※臨時休業で繋がらない場合がございます。その場合はメールにてご連絡ください。
営業時間 10:00~17:00(水曜日を除く)
定休日 火、水 (冬期1~3月は 火、水、木休)