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家づくりの知識
【住まいを彩るエクステリア #1】住まいの顔=エクステリアづくり3つのポイント
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街を歩いていて「この家、素敵だな」と思うことはありませんか?外観は、家の印象を左右する住まいの顔です。建物の形や外壁の素材に加えて大切なのが、植栽やアプローチ、塀、宅配ボックスといった「エクステリア」。道路からの目隠しや荷物の受け取りなどの機能で暮らしを支えるとともに、住まいを豊かに彩るうえでも重要な存在です。どのように計画すれば豊かな外観をつくれるのか、総合エクステリアメーカー、ユニソンの吉原智也さんに聞きました。
住まいの顔=エクステリアとは?
「エクステリア」とは、建物を取り巻く屋外空間の要素全般を指します。主には塀や門柱、アプローチ、駐車スペース、ポスト、植栽、屋外照明、表札、屋外水栓など。室内の床・壁材や家具などを指す「インテリア」と対照的なものと考えると、分かりやすいかもしれません。庭の要素も含まれますが、今回は住まいの顔となる玄関まわりにフォーカスして解説します。

静岡県の金子工務店による、建物とエクステリアをトータルで設計した住まい。モダンな建物と調和する塀、街並みに溶け込みながらさりげなく視線を遮る豊かな植栽、芝生の駐車スペース、モダンなデザインの門柱など、エクステリアが美しい外観を演出しています。
写真提供:金子工務店
@塀・フェンス
隣家との境界や道路からの目隠し、防犯など、目的に合わせた高さと幅で設計します。素材は天然木、コンクリート、ブロック、スチール、アルミニウム、樹脂、塗り壁など。格子やスリットの入ったデザインは風通しや軽やかさが得られます。
A植栽
草花や樹木は硬いイメージの建物に柔らかさを加え、さりげない目隠しにもなります。毎日の帰宅時に安心したり季節を感じたり、また来客を迎えたり道ゆく人の目を楽しませたりする効果も。住まいの象徴となるシンボルツリーを植えるのもおすすめです。
B門柱【表札、インターホン、ポスト、宅配ボックス】
表札・インターホン・ポスト・照明などをつけた柱。道路側に設置すると来訪者が敷地奥まで入らないため、プライバシーを保つ効果もあります。最近は郵便ポストだけでなく荷物を受け取れる宅配ボックスを併設する方法が主流で、後付けできる据え置き型タイプもあります。
Cアプローチ
道路や駐車スペースと玄関を結ぶ「道」。歩きやすさが第一で、床材には木や天然石、コンクリート、砂利、人工舗装材などが使われます。周囲に植物を植えると、季節の変化が目を楽しませてくれます。
D屋外照明
スタンド型ライトや地面に埋め込んで上方向に照らすアッパーライト、外壁や塀に設置するブラケットライトのほか、写真のように植栽を照らすスポットライトも組み合わせると夜間も美しい外観が実現します。人感センサー搭載やソーラー充電タイプなど製品によって機能も多彩。
E駐車スペース、カーポート
建物と駐車スペースの配置は最初に計画します。駐車に必要な面積は一台につきおおよそ5m×2.5m。雨天や荷物が大きいときなどを考慮して、玄関までのスムーズな動線を確保することが重要です。
「エクステリアを含めた外観は、住まいの顔になる存在です。住まい一軒一軒が連なって街並みをつくることを考えても、エクステリアはとても大切だと感じます」。そう話すのは、ユニソンで営業担当として多くの住まいづくりに携わる吉原さん。同社の施工事例を見ても、エクステリアに意識が行き届いた住まいは、建物の魅力をさらに引き出していることが分かります。
とはいえ住まいの予算も敷地面積も限られる中、どうしても建物が優先されるケースが多いもの。計画の最終段階でエクステリアの予算を削ったり、「数年後に工事をすればいい」と後回しにするケースも多くあるといいます。
けれど建物とエクステリアをトータルで考えることで暮らしやすさも美しさも増し、住まいへの愛着がわきます。「戸建て住宅の一番の魅力は、自宅の敷地に“外の空間”を持てることだと思います」と吉原さん。狭小地でも玄関まわりにシンボルツリーや草花を植えたり、短いアプローチを設けたりすることで、住まいに新しい表情が加わります。

建物と調和する塀やゲートを設計した住まい。点在させた植栽が柔らかな印象を与え、道路や隣家とのさりげない境界の役割を果たします。
(写真提供:ケイミュー)
名作住宅と呼ばれる建築を見ても、塀や植栽、アプローチが美しく整えられ、年月を経ても魅力を増しています。植物も美しい樹形に成長するまでには数年を要するもの。住宅と同時に計画することで、より愛着ある住まいになるのです。もちろん住み始めてから数年後に手を加えることも可能ですが、例えば駐車スペースのために一度コンクリートを敷くと、もう一度土に戻したりアプローチに作り替えたりするには手間も費用も要します。
では、玄関まわりをエクステリアで魅力的に彩るために大切なことは何でしょうか。事例をもとに、3つのポイントを解説します。
エクステリアPoint@ 玄関へのアプローチにクランクや曲線を取り入れる
パブリック空間である道路とプライベート空間の玄関をつなぐアプローチは、オンとオフのスイッチを切り替える場でもあります。季節の花を咲かせる植物や落葉する樹木を植えると、毎日の行き帰りに季節を感じて心が豊かに。来客を迎える空間としても重要です。
魅力的なアプローチをつくる上でおすすめの方法は、直線ではなくクランク(折れ曲がる)や曲線など、形に変化をつけること。歩きながら視線の先が移り変わることで奥行きが感じられ、空間に広がりが生まれます。短いアプローチには特に効果的で、緩やかな曲線にすると歩きやすく、奥行きが生まれます。
兵庫県で造園業を営む「IKUJYUEN GARDEN STUDIO/山中育樹園」が手掛けた住宅のアプローチは、道路から玄関まで回り込むようにクランクしています。周囲に複数の植栽スペースを設けることで四季折々の楽しみが生まれ、ご近所さんとのコミュニケーションの場にもなっているそう。アプローチでありながら、庭のような楽しい空間です。
「IKUJYUEN GARDEN STUDIO/山中育樹園」ご担当者の声
お施主様からのご要望は、玄関に向かって左奥のプライベートな庭へ通じる道は外から見えないように隠し、かつお隣の住宅と自然に区切りたいというものでした。奥の庭と隣家に対する目隠し役として横格子の木製フェンス、玄関の目隠しとして石張りの塀と、異素材を組み合わせることで変化を楽しめるアプローチが生まれています。インターホンは道路境界の木製フェンスに設置することでセールスなどの来訪者が玄関近くまで入らない設計とし、プライバシーを守っています。

家の奥にあるプライベートな庭と隣家の目隠しとして木製フェンスをL字型に設置し、視線を玄関へ誘導。軒裏と同じ木材を使うことで、建物と調和させています

玄関横からアプローチを見たところ。宅配ボックスやポストは道路境界ではなく敷地奥の石張りの塀に設置し、玄関を出てすぐに対応できるように。
以上写真2点提供:IKUJYUEN GARDEN STUDIO/山中育樹園
エクステリアPointA 敷地に合わせて植物を植える
魅力的な外観づくりで重要なのが植物。前述のように硬質な建物に柔らかさが加わり、季節を感じる仕掛けにもなります。「庭がなければ植物は植えられない」と思いがちですが、駐車スペースやアプローチ脇の小さなスペースでも、植物を植えると雰囲気が変わります。
京都の造園会社「庭花 niwahana landscapes kyoto」の事務所兼自宅では、年数を経て豊かに育った植物が道ゆく人の目を楽しませています。道路から玄関まで車1台分程度の奥行きながら、それ以上の広がりを感じさせる空間に。アプローチや駐車スペースなど随所に植えた木々や草花によって視線が上下左右に分散され、豊かなスペースが生まれています。
「庭花 niwahana landscapes kyoto」ご担当者の声
樹木は季節を感じさせることはもちろん、日射を遮る効果もあります。我が家は玄関が西向きなので、夏の暑さが課題。植物で囲むことで建物に当たる直射日光を和らげ、家の中や玄関まわりで快適に過ごせるよう考えて前庭をデザインしました。塀や駐車スペースの床も建物や植物となじむ石材や舗装材を選び、味わいある雰囲気をつくっています。

樹高5〜6mの大きな木を複数植え、影を落とすように配置されています。


左/室内から玄関ドアを開ければ森の中にいるよう。高木だけでなくさまざまな色の草花をミックスする方法は、狭小地でも参考になりそうです。
右/玄関の正面には石のベンチを。道路から見えにくく、家族のくつろぎの場所になっています。石塀と高木が適度な目隠しとなり、外の視線を緩やかに遮ります。
以上写真3点提供:庭花 niwahana landscapes kyoto
エクステリアPointB 機能的な門柱+植物でコンパクトかつ便利な門まわりに
住まい全体で面積の比重をどこに置くかは、住み手によってさまざま。アプローチや門柱まわりをコンパクトに設計するケースもあります。
「限りある敷地の中で、優先順位が高いのはやはり建物。最初に建物配置を決め、次に必要な駐車スペースを確保したうえでアプローチや門柱のレイアウトを決める方法が一般的ですが、特に都市部や庭を優先する場合は、アプローチや門まわりをコンパクトに設計するケースが多いです」(吉原さん)
コンパクトな設計でおすすめの方法は、デザインと機能を兼ね備えた省スペースの門柱を活用すること。さらにPointAでも解説したように、わずかな面積でも植物を植えると外観の印象が向上します。移動できるプランターに植えるのもおすすめです。
ユニソンで人気を集めるのが、宅配ボックスと郵便ポスト、インターフォン、表札を一体にまとめた製品「機能門柱」。外観と調和する色と質感を選ぶことで一体感がありつつ適度なアクセントになり、引き締まった印象に。大阪でエクステリアデザインと造園を手掛ける「エクステリア&ガーデン大阪」による住まいでは、建物と調和する機能門柱を取り入れています。
「エクステリア&ガーデン大阪」ご担当者の声
建物と駐車スペースを配置して敷地を有効に活用した上で、玄関まわりの限られた空間に、表札やインターフォンを集約した機能門柱を設置しました。手すりも合わせて、建物と調和するブラックで統一。門柱は背面のFIX窓と縦横比が近い形を選んで、大小のリズムを意識しました。周囲にプランターの植物や植栽スペースも配置し、潤いをプラスしています。


左/階段状のアプローチは幅を広めに設計し、一段ずつ浮遊しているようなデザインに。
右/すっきりとしたデザインの機能門柱。側面から郵便物を取り出します。
以上写真2点提供:エクステリア&ガーデン大阪
都市型住宅では特に、道路や隣家からの視線を遮る役割のエクステリアが重要です。塀を設けるにはまとまった面積が必要ですが、玄関前や窓の前など隠したい場所に幅の広い門柱をピンポイントで設けると、安心感が生まれます。さらに宅配ボックスやインターフォンなどを一体化すれば、コンパクトかつ機能的な動線をつくれます。

壁状の門柱に宅配ボックスやインターフォンを内蔵させた例。周囲に石や植物をあしらって彩り豊かに。
(写真提供:ユニソン)

玄関ドア前にポストなどを収めた門柱、リビングの掃き出し窓前面に目隠しのフェンスを設置した住まい。植栽スペースが住まいを彩り、道路との緩やかな境界線にもなっています。
(写真提供:ユニソン)
機能とデザインを兼ね備えたエクステリアを計画することで、暮らしやすく、毎日の行き帰りが楽しくなります。建物と調和させることで外観が素敵に彩られ、暮らす喜びが増すでしょう。