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「新素材探検」は、日々進化する身近な商品の素材や技術開発について、その道のプロにお話を伺う連載企画。第4回目は「ウールカーペット」です。
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【第4回 新素材探検「ウールカーペット」編】夏も冬も快適で、汚れにくい。天然素材のウールが、暮らしを心地よく変える。

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床は、壁や天井に比べて住まいの中で最も肌に触れる場所です。床材を選ぶ時、最初に浮かぶのはフローリングや畳かもしれませんが、触れた時の心地よさを大切にしたい時におすすめなのがウールカーペット。「夏は暑いのでは?」「汚れやすいのでは?」といった疑問に答えるため、連載企画「新素材探検」第4回目はウールカーペットにフォーカス。1962年の創業以来、高品質のカーペットを作り続ける堀田カーペットの代表、堀田将矢さんにお話を聞きました。

夏も冬も快適。ウールの優れた保温性&吸放湿性

堀田さんは、ご自宅でもウールカーペットを愛用されているとお聞きしました。暮らし心地はどうですか?

堀田さん:自宅では、リビングはもちろんキッチンや廊下、洗面室など、ほぼすべての部屋にウールカーペットを敷き詰めています。足触りが心地よく、一年を通して裸足で過ごせるほど。特に魅力がよく分かるのはリビングですね。ソファに座るだけでなく、床に直接座ったり寝転んだりできるからくつろげる居場所が増えて、暮らし方そのものが変わるんです。我が家は三人の子どもがいますが、赤ちゃんの頃は床に寝かせていても安心でした。感覚としては、フローリングよりも畳に近いのかな。それから、意外におすすめなのがキッチン。一日に何度も立つ場所ですが、足元が柔らかいカーペットだと疲れにくいし、冬も冷えにくいんです。

堀田カーペット代表、堀田将矢さんのご自宅。カーペットを敷き詰めた室内は座ったり寝転んだりと自由自在で、お子さんはどこでもお昼寝できるほど

一方で住まいに取り入れようと思うと、「夏は暑いのでは?」という心配があります。

堀田さん:ウールは保温性も吸放湿性も高いため、冬は温かく、夏も涼しく快適に過ごせる素材なんです。最近では、登山のインナーに高品質のウールが使われていますよね。汗を吸うのにドライな状態を保ち、寒い時は高い保温性で体を温かく保ってくれる。カーペットも同じです。夏はベタつかないので床に触れたときの不快感を軽減してくれるし、冬は足元の冷たさを和らげ、さらに高い吸湿性能で窓の結露を防ぐ効果もあります。

堀田カーペットのロールカーペットシリーズ「WOOLFLOORING」。織りによる深みのある色と陰影はもちろん、肌触りのよさで住まいを彩る

羊が体温を守る機能を、そのまま生かしているんですね。ホコリや花粉症、アレルギー性の喘息が気になる場合はどうでしょうか?

堀田さん:カーペットは繊維の間にホコリや花粉をとどめてくれるため、フローリングに比べてホコリが舞い上がりにくいという調査結果があります。日常的に掃除機でホコリを取り除いていれば、空気中に舞う細かなホコリを抑えられます。ダニを心配する方も多いですが、ダニはウールそのものを好むというよりも、皮脂や角質、食べこぼしなどをエサにして繁殖します。毛足が短く密度の高いカーペットならゴミが入り込みにくく、掃除機で取り除きやすいのでダニの繁殖を抑えられますよ。

日常の手入れは吸引力が高い掃除機を使い、髪の毛をとかす感覚で表面のゴミや遊び毛を吸引するのがおすすめ(堀田カーペットの製品の場合。メーカーによって異なるため、購入時に確認を)

フローリングよりもホコリが少ないのは意外でした! 静音性も特徴ですね。

堀田さん:フローリングやタイルなどの硬い床材と比較すると、「発音性」「衝撃音に対する遮音性」「吸音性」のいずれの防音性能も優れています。マンションなど集合住宅をリノベーションする際、床の遮音等級を示す「L値」が45以下の素材を使うよう規約で定められているケースが多いですよね。当社の敷き込みカーペットはフェルトの下地を合わせて施工するため、L値は40程度。集合住宅にも適した素材であると言えます。

実は「汚れがつきにくく、落ちやすい」。天然素材ならではの機能性

先ほどキッチンにおすすめとお聞きしましたが、カーペットは汚れやシミがつきやすいのではないでしょうか?

堀田さん:実は、ウールは「汚れがつきにくく、落ちやすい」素材です。羊毛の天然の油分やキューティクルのおかげで、水分をはじく高い撥水性があるんです。羊が雨に濡れても、体がびしょびしょにならないでしょう? 飲み物や調味料をこぼしてしまった場合も、すぐには汚れが染み込みにくいんです。

ウールカーペットに液体をこぼした様子。高い撥水力によって汚れが浮いているため、すぐに拭き取れば跡が残りにくい

それは心強いですね。液体をこぼしてしまった場合は、具体的にどう手入れをしたらいいでしょう?

堀田さん:基本的には、ウールのセーターや衣類のシミ取りと同じ。撥水性を生かして、パイルに染みこまないうちに拭き取ることが大切です。乾いたタオルやティッシュで、押し付けるように吸い取ってください。こすったり引っ掻いたりすると生地を傷めてしまうので、優しく扱うことがポイント。頑固な汚れはぬるま湯をかけ、綺麗なタオルやスポンジで叩いて、タオルなどに汚れを移してください。もし汚れが残ってしまっても、ウールカーペットは「遊び毛」の働きで、汚れがだんだん目立たなくなるのが特徴です。

左/こぼした醤油をティッシュで拭き取った様子。一度では取れない場合もあるが、優しく繰り返すとシミは残りづらい

右/頑固な汚れならぬるま湯をかけ、きれいなタオルやスポンジで軽く叩き、セーターのシミ取りのようにタオルに汚れを移す

「遊び毛」とは、カーペットから自然に出てくるホコリのような毛のことですか?

堀田さん:はい。ウールのセーターに毛玉ができるのと同じ現象ですね。当社のカーペットは、繊維に撚りをかけて糸にしたものを束にし、しっかりと締めつけて作っています。簡単には抜けないのですが、歩いたり触れたりといった日常的な使用の中で、短い毛が少しずつ抜けていく。これが遊び毛です。掃除機で遊び毛を吸うと表面の汚れも一緒にからめとることができるため、きれいな状態を保つことができるんです。高級ホテルがウールカーペットを選ぶのは、遊び毛によって汚れが目立ちにくくなり、美しさを長く維持できるからなのです。

確かに、老舗ホテルやレストランのカーペットは、美しさを保たれていますね。どのくらい長く使えるものなのでしょうか?

堀田さん:使う場所や頻度によりますが、日常的に掃除機を、年一回程度はスチームクリーナーをかけて適切に手入れをすれば10年以上は使える素材です。私の自宅は、敷き込みタイプのウールカーペットを使い始めて12年ほど。子どもたちがいつも座る場所の床は擦り切れていますが、個人的にはそこまで気になりません。もちろんよく座ったり歩いたりする部分は摩耗しますが、当社のような織り物によるカーペットは、多少擦り切れても長く使えることが魅力です。無垢のフローリングや石もそうですが、天然素材は年月とともに少しずつ変化するもの。傷やへたりを一切つけずに使うより、暮らしになじみながら長く付き合えることを大切にしてもらえたら嬉しいです。

手前のカーペット(マスタード)は使い始めて約50年、奥(ベージュ)は約30年がたったもの。貼り替えを要するかは個人の価値観によるが、経年変化も味わいの一つ

カギは「織りの密度」。堀田カーペットの技術を紐解く

製造工程では、どのようなことを大切にしていますか?

堀田さん:当社は1962年、日本のカーペット生産の80%以上を担う大阪で創業しました。ウールカーペットの品質を決めるのは「毛足の長さ・糸の太さ・織りの密度」の三つのバランス。そこに、メーカーごとの方針や技術が表れると考えています。中でも当社が創業以来大切にしているのが、密度の高さです。一般的に「上質なカーペット=毛足が長い」というイメージがあるかもしれませんが、例え毛足が長くても密度が低いカーペットはへたりやすく、触り心地が下がります。さらに保温性や調湿性といったウール本来の機能も、十分に発揮されません。密度を高めることで機能が高まり、毛並みが整って美しさを保ちやすくなる。だからこそ「長さ方向に糸を多く使うよりも、密度を上げること」を製造の要に据えています。

堀田カーペットの特徴である、国内でも貴重なウィルトン織機による織りの様子

原料の羊毛は、どんなものを使っていますか?

堀田さん:扱うウール繊維は、およそ50種類にのぼります。定番商品の多くに使うのが英国産ウール。ふくらみがあるので、ほどよい反発力を生かした踏み心地のいいカーペットをつくりやすい素材です。他にも品質と価格が安定したニュージーランドウール、柔らかくみずみずしいスペイン産メリノ種などを用途に合わせて使い分けています。

膨らみがあり、独特の艶を見せる英国産ウール

製品に合わせて糸から開発していると聞いて、驚きました。

堀田さん:例えば「光沢のあるカーペットを作りたい」「太めの糸で触り心地を良くしたい」といった製品のコンセプトを実現するために紡績会社と相談し、糸づくりから取り組んでいます。カーペットは見た目のデザインだけでなく、糸の選び方や織り方によっても性質が大きく変わる。材料や工程を工夫して目指す質感を実現するのが、ものづくりの面白さだと思います。

製品に合わせて開発される糸が、カーペットの質を決める重要な要素になる

そうして開発した糸を、どのようにカーペットに仕上げるのでしょうか?

堀田さん:カーペットの製法には、大きく「織り」と「刺繍」があります。一般的なカーペットに多いのが刺繍。布に糸を突き刺し、裏側にもう一枚布を貼り合わせる方法によって製造されます。対して当社の製品の多くは、ウィルトン織機というイギリスの産業革命の時代に開発された機械による「織り」を採用しています。経(たて)糸と緯(よこ)糸を織り重ねるため耐久性が高く、丈夫で長く使えるカーペットに仕上がります。

18世紀にイギリス南部の小さな町、ウィルトンで発明されたウィルトン織機を用いるのは国内で4社のみ。伝統を継承し、さらに職人が日々技術を研鑽することで、多様な表情を生み出している

カーペットの毛足には一般的に「カット」と「ループ」の2種類がありますね。違いを教えてください。

堀田さん:毛足をカットした「カットパイル」は、ふかふかとした柔らかさを感じやすく仕上がります。一方、タオルのように糸を輪状に残した「ループパイル」は弾力があり、畳のようなハリのある踏み心地が生まれます。また、一般的にカットパイルは汚れがつきやすく落としやすい、ループパイルは汚れがつきにくく落としにくいとされます。好みや使う場所によって選ぶといいですね。

自分で置けて、デザインもアレンジ可能。タイルカーペットの魅力とは

最近は、フローリングの上に自分で敷ける住宅向けタイルカーペット「WOOLTILE for Home」シリーズが人気ですね。どのような経緯で開発したのでしょうか?

堀田さん:もともと当社では、オフィスや商業施設で使われるタイルカーペットを製造していたんです。その製品を「住まいで使っています」という声を少しずつ聞くようになって。オフィスや商業施設向けの製品は、下地込みでプロの業者が施工する仕様ですが、一般の方も手軽に住まいに取り入れられるタイルカーペットを構想するようになりました。そんな中、2017年に縁あって譲り受けたのが、世界に一台しかないタイルカーペット製造に特化した機械「アキスタイル」。この強みを生かして2019年に開発したのが、住宅向けタイルカーペットシリーズ「WOOLTILE for Home」です。裏面に滑り止め加工を施しているため、接着剤を使わずに今のお住まいの床に置くだけでOK。一枚あたりのサイズも50cm×50cmと扱いやすく、持ち運びや設置も手軽です。

1枚から購入できる「WOOLTILE for Home」シリーズの「Puzzle」。ラインの入れ方のバリエーションが複数あり、好きな形とデザインに設置できる

デザイナーが手がけたグラフィカルなデザインが特徴ですね。

堀田さん:一般的なタイルカーペットは、幅3.64mの大きな機械で長い反物を作り、裏側に樹脂を付けた後、型で打ち抜いて製造します。反物にわずかでも歪みがあるとまっすぐにカットできないため、柄の表現は難しかった。対してアキスタイルは50cm四方のタイルカーペットを一枚一枚製造できるので、ミリ単位の繊細なデザインが可能です。そこでグラフィックを生かした製品を作ろうと、海外デザイナーとコラボレーションを始めたのです。

デンマークのグラフィックデザインスタジオ、All the way to parisがデザインしたタイルカーペット「Lines」。写真のブルーを含む3色×3柄と「eye」の柄を組み合わせることができる。柄の部分は2種類の糸をミックスし、習字の筆で描いたような揺らぎやカスレを表現

部屋の広さに合わせて枚数を選べる上、並べ方でデザインが変わるのがユニークです。

堀田さん:ラグ感覚で使えること、好きな場所に自分で敷けることをコンセプトにしています。50cm四方のタイル状なので、フローリングの上に好きなパターンで並べるだけ。余った部分はハサミやカッターでカットできます。賃貸住宅でも工事することなくインテリアの印象を変えられますし、気分に合わせて並べ替えても楽しいですね。お手入れ方法は先ほど話した一般的なカーペットと同じですが、汚れが気になる場合、その部分だけ買い替えられるのもタイルカーペットの魅力です。

左/タイルカーペットの断面。裏に滑り止め加工が施され、表は糸が密度高く接着されている

右/置きたいスペースの大きさに合わせて、自分でカットできる

タイルカーペットは、どんな使い方がおすすめですか?

堀田さん:リビングにラグのように敷くのはもちろん、ベッドサイドやキッチンなど、素足で立つ場所にマットのように取り入れたり、座布団のように一枚で使うこともできます。模様替えの際も動かしやすいのがメリット。まずは数枚買ってみて、少しずつ買い足していくのも楽しいですよね。ただし床暖房には対応していないので、適材適所で使っていただけたらと思います。

新製品の「Tanbo」は、どのようなコンセプトで作られたのでしょうか。

堀田さん:奈良県東吉野村を拠点とするイギリス出身のデザイナー、フィリックス・コンランさんとの出会いが始まりでした。彼が暮らしの中で魅了された日本の田んぼや四季の移ろいを、カーペットに落とし込んだプロダクトです。

タイルカーペット「Tanbo」。四季の棚田や田畑から着想を得た4色×4柄をラインナップし、組み合わせによって異なるデザインにアレンジできる

フィリックスさんから「こんなカーペットを作りたい」と提案があったそうですね。

堀田さん:そうなんです。最初はデザインを依頼する予定はなかったのですが、工場を見学したフィリックスが、当社の技術に「エクセレント!」とものすごく感動してくれて、数日後には「こんなカーペットを作りたい」とデザイン案が送られてきたんです。とても嬉しかったのですが、すぐに製品化することは難しく、そのことを伝えるために彼の家を訪ねました。すると彼、ホームセンターで購入したタイルカーペットを使って、自分でモックアップを作っていたんですよ(笑)。それが本当にかっこよくて。「これを商品化しよう」と決め、開発が始まりました。

春の水を張った青、夏に育つ稲の緑、秋の収穫後の茶、そして冬の雪の白と、季節をイメージした4色

彼が思い描く田んぼのイメージを形にするために、どのような工夫があったのでしょうか。

堀田さん:自然の色のグラデーションを細やかに表現するため、糸選びにこだわりました。これまで「WOOLTILE for Home」シリーズでは無地は単色で表現していましたが、今回は色の違う2本の細い糸を撚り合わせた「ツイード糸」を開発し、同じ色の糸を束ねた「フリーズ糸」とミックスしています。ランダムに色を混ぜることで自然なグラデーションを描き、目地を目立たせないとともに、“ゆらぎ”によって自然風景を表現しました。

ランダムに糸の色をミックスすることで、自然風景のゆらぎをウール素材に落とし込んだ

これからウールカーペットを住まいに取り入れたいと考えている方へ、メッセージをお願いします。

堀田さん:カーペットを敷くと、床が「柔らかい場所」になり、座ったり寝転んだり、子どもと遊んだりと、住まいの中での過ごし方が変わります。最初から広い面積に敷く必要はありません。まずはリビングにタイルカーペットを一枚置いてみて、気に入ったら一枚ずつ広げていく。そんな取り入れ方もいいと思います。天然素材ならではの機能性と、長く使える丈夫さ、何より触った時の心地よさが、ウールカーペットの魅力です。手入れをしながら暮らしになじませていくことで、インテリアとしても大切な存在になってくれると思います。