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陶芸家・福村龍太×SOLIDO
素材との対話で生まれるもの

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独創的な質感を持つ作品で注目を集める、陶芸家の福村龍太さん。東京で開催した個展は行列ができるほどの人気で、海外からも注目されています。素材がもつ繊細な表情に意識を傾ける福村さんは、5年前、セメントの風合いを生かしたケイミューの建材『SOLIDO(ソリド)』に出会い、作品のディスプレイに使うように。リノベーションした自宅の内装にも取り入れています。素材の魅力を引き出すことに向き合う福村さんの作陶とSOLIDOが共鳴する部分、住まいと創作の関わりを聞きました。

失敗とされる表情に
美しさを見つけた

陶芸家、福村龍太さんの代表的な作品は、金属のような質感を持つ銀彩の半磁器。艶のある滑らかな表情とクレーターのような凹凸が組み合わさった独創的な風合いは、眺めるほどに味わいがあります。

「ボコボコとした質感は、金属系の釉薬(※)を組み合わせた化学反応によって生まれています。伝統的な陶芸のセオリーにはない釉薬の組み合わせで、言うならばタブーとされる方法。普通なら失敗とされる表情に魅力を感じました」

※釉薬:陶磁器の表面を覆うガラス質の膜のこと。素地に水や汚れが染み込むことを防いで丈夫にすると同時に、多彩な色や質感を表現します。

セメントの風合いを生かしたSOLIDOとも調和する福村さんの作品

一般的な陶器は、素地に釉薬をかけて焼き上げ完成させますが、福村さんの銀彩の作品はその数倍の手間がかけられています。まず、素地にベースの釉薬をかけ、その上から金属系の釉薬をのせて焼成すると、釉薬の化学反応で気泡が生まれ、表面に粗い凸凹が現れます。その表面をグラインダーで磨いてから銀彩を施し、低温の電気窯で再度焼き上げて、最後に銀を磨けば完成です。

福岡県うきは市、耳納山地の中腹にある窯元「日月窯」で、作陶に取り組んでいる福村さん。作品のイメージは、海の波、風に揺れる植物といった自然の姿から得ていると言います。制作では事前にスケッチを描くことはなく、頭の中でイメージを描き、土に触れて手を動かしながら形にしていきます。陶芸を始めてからは古いものにも心惹かれるようになり、「エジプトの古い食器の質感にインスピレーションを得ることもありました」と話します。

日月窯の工房。制作時はつなぎの作業着を着て、音楽をかけながら制作に向かっているそう

実験と実証から作り出す
唯一無二の表情

王道とされるセオリーにとらわれず、自由な発想で作陶に取り組む福村さん。ゆえに材料も成形も焼成も、作品づくりの手法は無限です。どのルートを選べば、素材の魅力を最大限に引き出せるのか。その選択に、多面的な思考力と判断力が試されると話します。

「土は目的に合わせて全国から取り寄せ、オリジナルの配合でブレンドしています。現在使っている土は15種ほど。銀彩の作品はきめ細かい土と相性が良いので、きれいで白っぽい土を使うことが多いですね。とはいえ土も自然のものなので、粒子の大きさや鉄分の度合いが毎回違うので、配合を少しずつ変えて調整します」

銀彩の仕上がりを左右する釉薬はmg単位で配合。濃く塗った部分は焼成中に流れ落ち、それが模様を描き出すため、計算しながら筆で絵を描くように釉薬をのせていきます。窯の中のどの位置に置くかによっても、仕上がりに個性が現れるのだそう。

日月窯のショーケース。茶碗は、茶道をたしなむ福村さん自身の経験を生かして制作されています

土、ろくろ、釉薬、熱。あらゆる要素をかけ合わせながら思い描く表情に向かって材料と工程を選び、実験し、実証する。その繰り返しが、福村さんの作陶のベースにあります。

「失敗するだろうなと思っても、毎回実験的な要素を入れています。失敗から学ぶものの方が多いんですよ。火の当て方も、釉薬の調合も。そこから少しずつデータを集めて、組み合わせを探り続けます。思ってもいなかった面白い色味が偶然現れることもあるので、そんな時は要因を分析して、偶然ではなく再現できるようになることを目指します」

銀彩はその特性上、使ううちに酸化して黒く変化していきます。作り手から使い手に渡っても、さらに表情を変えていく。計算外の美しさも銀彩ゆえの魅力です。

「使い始めと1年後のテクスチャーは、まったくの別物です。銀という素材が持つ特徴であり、好きなところですね」

温度コントロールができるガス窯と、電熱線で焼成する電気窯、薪で火を起こす登り窯を使い分けています

陶芸のルールを
超えたことが転機に

ルールにとらわれない独創的な発想に至るまでには、長い時間がかかったと言います。「日月窯」を開いた陶芸家の父、元宏さんの背中を見て育ち、子どもの頃から自然と陶芸家を志した福村さん。地元の芸術大学で陶芸を学び、卒業後に作陶を開始しますが、20代前半は父の作風からの影響が大きく、「自分の表現」に迷い、作品もなかなか売れなかったと振り返ります。転機は25歳の時、インスタグラムで知り合ったニューヨーク在住の陶芸家の誘いで、一ヶ月現地に滞在して制作活動を行ったことでした。

「現地で出会った陶芸家たちが、すごく自由にものづくりをしていたんです。カラフルな色だったり、面白い質感だったり。伝統や“〇〇焼”といった流儀がない分、発想が伸びやかで、オリジナリティが高いんですよ。日本の陶芸の厳格なルールを守って制作してきた僕にしてみれば『そんなやり方していいの?』と怖くなるぐらいでしたが、それが意外なほどかっこよくて。そのときに『自分も自由にやってみよう』と、自然と思うようになりました」

開窯時からある登り窯。作陶を始めた当初は、薪の窯で焼く作品を中心に制作していたそう

それからは、さまざまな素材の組み合わせを試す実験の日々。伝統的な手法では組み合わせないもの同士を調合し、そこから生まれる意外な表情を積極的に創作に取り入れていきました。「本来ならミスとされる焼き上がりにも、着眼点をもらいました」と福村さん。視点を変えることで新しい表現を切り拓き、美しさの価値観を広げていく過程は、作陶人生の大きな分岐点になりました。

「ゼロから生み出すのではなく、既存のものをかけ合わせて新しいジャンルを切り拓くことは、今の時代に合っている気がするんです」

薪の窯で焼く「灰かぶり」と
銀彩作品の相互作用

福村さんの作陶の原点は、薪の登り窯で焼く「灰かぶり」と呼ばれる焼き物です。器に降り積もった灰が土の中の長石と反応してガラス化するもので、土の質感がダイレクトに現れる力強さは、銀彩の作品とはまた違った魅力を持ち合わせています。現在も、銀彩の作品と並行して作り続けています。

登り窯から出した灰かぶりの作品。土と炎が作り出した表情は色合いも豊か

約2日間、昼夜を問わず薪をくべ続けて焼き上げる灰かぶりは、その時その時の火や熱の状態によって仕上がりが変わり、「意図の及ばないところで生まれる表情が面白い」と福村さんは話します。窯から出したばかりの作品は、ガラス化した釉薬がゴツゴツと尖った野趣溢れる表情です。ここに削りをかけ、塩梅を見ながら滑らかに整えていきます。

ガス窯と電気窯を使って温度をコントロールしながら焼く銀彩とは対照的な灰かぶりですが、その制作が銀彩の作品にも影響しています。例えば、焼成の過程ですすけた窯の棚板や、黒くなった煉瓦の表情など、偶然の産物から受けたインスピレーションが福村さんの創作意欲を刺激します。

「かっこいいですよね。これは『作品』とは言えませんが、こんな表情を再現したいと思って板状の作品を制作してみたことがあります」

薪の窯で作品を焼成する時に載せる棚板からインスピレーションを得ることも。計算されていない表情と風合いに惹かれるのだそう

灰かぶりを制作し続ける理由はもうひとつ。さまざまな表情の器をつくることで、食卓を豊かにしたいという思いです。

「実際に食事に使うシーンを思い描くと、テーブルに銀彩の器ばかりでは面白くないし、強すぎる気がするんですよね。普段の食事では実験を兼ねて自分の器を使っていますが、料理に合わせて白い陶器、銀彩の器、ガラスの器と、組み合わせた方が楽しいでしょう。僕自身も、食卓では色々な器の組み合わせを楽しみたいと思っています」

質感に惹かれた
SOLIDOとの出会い

素材や製法によって異なる器の表情を楽しみ、追求している福村さん。ケイミューの壁材・SOLIDOを作品のディスプレイに使い始めたのも、その表情に惹かれたことがきっかけだったそう。

「初めて見たとき、ここに作品を置いたら絶対にかっこいいだろうとイメージが浮かんで、胸が踊りました。セメント本来のグレーや黒っぽい風合いが、作品ととても相性が良いと思いました。展示する際や、ウェブサイトに作品の写真を載せる時の背景にも使っています」

SOLIDOとの出会いは東京のギャラリー「白日」。素材としての可能性探求のためにケイミューが実験的に素材を提供し、プレートとして使用されていました

SOLIDOはセメントを原材料とした窯業系建材。高温蒸気の中でセメントを硬化させる際に現れる白い模様によって、一枚一枚異なる表情を持っています。この模様は「エフロレッセンス」と呼ばれ、コンクリート業界では本来、タブーとされる現象。ですが、それこそがセメント本来の風合いだとして着色塗装は施さず、あるがままをプロダクト化しました。土と釉薬、熱を組み合わせて一点ものの表情をつくり出す福村さんの作品に、通じる部分を感じます。

「一枚一枚で表情が違うことがSOLIDOの良さであり、自然素材とも通じる部分。だからこそ、土から出来た焼き物とも共鳴するのだと思います。単体で置いても素敵ですが、作品の背景となって魅力を引き出してもくれる、柔軟な素材ですね」

SOLIDOは一枚ずつ表情が違うため、合わせる作品を考えるのも楽しいそう

素材感を楽しむ住まいへ
リノベーション

素材感を大切にする福村さんの感性は、住まいにも現れています。奥さまと3人のお子さんと暮らしているのは、中古の平屋をリノベーションした住まい。暮らしのなかで愛される作品を目指す福村さんにとって、家もものづくりの源泉であり、実験の場です。

設計プランや仕上げは福村さんが考え、信頼できる職人に施工を依頼。新居は工房と近接しているため、毎日のように現場に立ち寄って、仕上げ方を相談しながらつくり上げていきました。考えながらつくる過程は、福村さんの作陶とも重なります。

山々を眺める南側には作品室を設けました。将来はギャラリー利用も想定しています

「家はきれいに仕上げるのが普通だと思うのですが、どちらかというと『少し崩したい』というイメージがあったんです。その感覚を丁寧に伝えて、仕上げの質感を変えてもらったり、材料を選んだり。施工と設計が同時進行で職人さんは大変だったと思いますが、満足できる住まいになりました」

作品室の床は、風合いも長さもバラバラな古い足場板を再利用したもの。表面を削って滑らかに整えられているので足触りも楽しめます。室内の壁はベージュの漆喰仕上げで、手仕事の跡が空間におおらかな雰囲気を生み出し、自然光や照明の光を受けて表情を変えるのも魅力です。

「初めは白い土漆喰仕上げを考えていたんですが、施工途中を見たらイメージと違っていて。大工さんに頼んで、僕が陶芸で使っている鉄分を含んだ土を漆喰に混ぜてもらいました。漆喰と土は似ているから、イメージがしやすかったですね」

LDKは既存の梁を現し、床は無垢材のフローリング貼り、壁は漆喰仕上げに。北向きの窓からは隣の公園を一望できます。

大切にしたのは、ディスプレイした作品や愛用の家具が映えるよう、プレーンな空間に仕上げること。壁や床、天井は質感が豊かな素材を厳選しつつ、色や材料の種類を絞ることでギャラリーのような平静さを持たせ、後から足すインテリアを楽しめるように余白を残しています。

陰影がきれいに見えるように、自然光が入る設計にもこだわりました。あえて北向きに配置したLDKは、一日を通して柔らかな光が注ぎます。家具は福岡のギャラリー「うつしき」で購入したインドの古家具がメイン。「空間に合うかどうかを気にせず、良いと思ったら買ってしまうんです(笑)」と言いますが、福村さんが選んだ物たちは、空間に美しくフィットしています。

自然素材とヴィンテージ家具で揃えた空間。色を絞りつつ異素材をミックスすることで、シンプルながら互いを引き立て合うインテリアに仕上がっています

クールな質感で統一した
キッチンは実験の場

自然素材を使った空間で存在感を放つのが、オールステンレスの業務用設備を設置したキッチン。この場所は、作品の使い勝手を実験する場も兼ねており、4口コンロに二層シンクというプロ仕様の設備は、下積み時代に居酒屋の厨房で料理の腕を磨いた福村さんの希望です。キッチン背面の壁は、「SOLIDO typeM_FLAT セメント」で仕上げられています。

「SOLIDOは漆喰や無垢材との相性も良いので、どこにでも似合うんですよ。施工の様子を確認しながら使う場所を考えました」

カウンターの天板は自分で購入した無垢の一枚板。カウンター内は、座った人と目線が合うように床の高さが低くなっています

ステンレスの厨房とセメントのSOLIDOのクールな雰囲気が調和しつつ、ムラのある表情と無機質な金属がコントラストを描きます。夜になれば照明の明かりを受けて、SOLIDOが描く繊細な表情が浮かび上がり、ラグジュアリーな雰囲気になるそう。

「自宅で展示会やイベントを開いて、キッチンに出張シェフを招いても面白いかも。最近は自分で寿司を握って、カウンターで娘に食べてもらっています(笑)」

仕事と暮らしがゆるやかに混じり合う住まいが、作陶の可能性を広げていきます。

ステンレスの壁面と業務用コンロの硬質な雰囲気に、SOLIDOの風合いが柔らかな印象を与えています

暮らしのなかで追求する
造形美と機能美

「日常的に使いやすい器をつくりたいんです。そのためには、自分で使い心地を検証するのが一番。お客さんに話す時も、『このボウルはスプーンの入りがいいんですよ』などと話せれば説得力がありますよね」

自宅では家族と一緒に自分の器で食事をし、コーヒーやお酒も自分のカップで楽しみます。使いにくさを感じたら、サイズや形を微調整することも。造形美と機能美、両方のバランスを追求することがテーマにあると話します。

廊下の壁一面に設けた造作棚には、所狭しと並ぶ自身の作品や世界各地で買い求めた食器。子どもたちも陶器で食事をしているそう

自身の茶道経験を生かして制作する茶碗では、両手で持った時のフィット感や、お茶を立てる時の片手での持ち具合を検証。最近は生け花も始め、花を生けた時のバランスを計算しながら花器の形を考えるようになったと言います。作品の質感も、見た目の美しさだけでなく、触れた時の心地よさを第一に。暮らしをベースに考えられた作品だからこそ、使ううちに風合いも愛着も増していきます。

自身も茶道で愛用する茶碗は、持ちやすいフォルムを意識している。載せているのはインドの古いトレイ

「今後は、食器と呼ばれるものはひと通り作ってみたいですね。食器以外の複雑な形のものにも興味があって、今考えているのはアルコールランプです。それでお湯を沸かして、コーヒーを淹れてみたいんです」

福村さんの言葉には、キャリアを重ねた今も作陶に心を躍らせ、日々を楽しんでいる想いがにじんでいました。住まいという新たな実験の場を得て、これからどのような作品を生み出すのかが楽しみです。

古材で製作した玄関の戸に、塗装した外壁。既存を生かしつつ素材感を整えることで心地よい住まいに一新

福村龍太さん

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店舗情報

日月窯

住所 福岡県うきは市吉井町富永404-4
電話 0943-76-3553
営業時間 12〜17時
定休日 水曜
※金・土・日曜のみ併設のカフェ営業あり