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汚れを分解して洗い流す外壁材『光セラ』開発ヒストリー

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『光セラ』とは、太陽の力で汚れを分解して雨で洗い流す、独自のセルフクリーニング機能を備えた外壁材。最近「CMで知った」という方もいると思いますが、実は『光セラ』が誕生したのは2002年。ケイミューに統合する前の松下電工(現在のパナソニック)で開発され、その後も研究と開発を重ねパワーアップを繰り返してきた外壁材です。そうして2021年には窯業系サイディングとしては初の「色40年品質」(※)の『光セラ18』を発売。そこにたどり着くまでの歩みと『光セラ』の特長を、ケイミューで外壁材の技術開発を担当している岡山誠史さんと春名基全さんに伺ってきました。

太陽の光でキレイを保って日焼けも防ぐ!?

『光セラ』はどんな特長を持った外壁材なのですか?

岡山:『光セラ』は光触媒コートを施した、セルフクリーニング機能を持つ外壁材です。外壁材の種類でいうと、窯業(ようぎょう)系サイディングに分類されます。光触媒とは、紫外線を浴びるとその表面に強力な酸化力を生んで、付着した有機物や細菌を分解する環境浄化材料のこと。抗菌や防汚の効果がある材料として、暮らしのさまざまな場所で使われています。

ケイミューで外壁材の技術開発を担当している岡山誠史さん(左)と春名基全さん。奈良にある研究所でお話を伺いました

他の外壁材とは、何が違うのでしょうか?

春名:雨水の力で汚れを洗い流すだけであれば他の外壁材もありますが、光触媒の力で汚れを分解して雨水の力で洗い流す、この2つの力を併せ持つ外壁材を展開しているのは、今のところ私たちケイミューの『光セラ』だけです。

岡山:雨水で汚れを洗い流すタイプの外壁材は、親水性という水になじみやすい性質のコーティングが施されていて、雨水がペターっと濡れ広がって汚れの下に入り込み、汚れを浮き上がらせて流します。でも、それだけではだんだん汚れが蓄積されていってしまう。『光セラ』の光触媒コートは、汚れ分解力と超親水性という性質を持っていて、光触媒の力で汚れを分解した上で、汚れを雨水で浮かび上がらせて洗い流すので、汚れが蓄積しにくいんです。

春名:一方、『光セラ』の色品質を支えているのは、光触媒コートに加えて、その下に塗っているセラミックコートや高耐候性コートによるものですが、その中でも光触媒コートに無くてはならない存在がセラミックコートです。

「ネオロック・光セラ16」「エクセレージ・光セラ15/16」「フィルテクト・光セラ16」の断面イメージ(画像提供:ケイミュー)

セラミックコートはどういった働きをしているのですか?

岡山:まず、セラミックというのは無機物のことで、陶器や磁器、セメント、ガラスなどが該当します。対して有機物というのは、プラスチックや木材、紙などのことで、外壁に付着する汚れも一般的な塗料も大体が有機物です。

春名:セラミックコートは平均で5ミクロン(1ミクロン=1000分の1mm)ほどの厚さの塗膜で、例えると薄いガラスの膜のようなものです。ガラスはずっと紫外線を浴び続けても劣化せず、色あせも起きず、そして非常に長寿命ですよね。でも、ガラスは紫外線を通します。紫外線を浴びるとセラミックコートの下の有機塗料である着色層が日焼けして色あせてしまいます。そこでどうしたかというと、みなさん、日焼け防止のためにお肌に日焼け止めを塗りますよね。それらに使われているものと同じ無機系紫外線吸収剤をセラミックコートの中に入れているんです。

日焼け止めと同じ成分が入っているとは驚きです。外壁の日焼け防止にも効くんですね。

岡山:光触媒コートは着色層を分解するほどの力があるため、セラミックコートは光触媒コートからも着色層を守っています。紫外線を浴びても劣化しない性質を持ちつつ、紫外線をカットして着色層を守ってくれるセラミックコートのおかげで、『光セラ』は汚れの分解力が高い光触媒を使うことができているのです。

春名:セラミックコートと似たもので無機塗料という外壁用塗料も世の中にはありますが、そのほとんどは有機樹脂に少しだけ無機樹脂を混ぜているものです。じゃあ『光セラ』のセラミックコートはどうかというと、主骨格となる成分は100%が無機樹脂なんです。

100%! ほぼガラスのような素材でできているものを「塗る」ということが、まったくイメージできません。

岡山:塗る時点ではサラサラの液体状で、硬化するとガラスのようになるんです。一般的な無機塗料もそうですが、塗膜がとても硬くなるので、塗るには技術力が求められます。そんな性質を持つセラミックコートに光触媒コートを重ねる過程が、開発時に一番苦労したところでした。

春名:もうひとつ、なるべく薄く塗るということも課題でした。先ほどセラミックコートの厚さは平均5ミクロンとお話ししましたが、光触媒コートの塗膜はさらに薄いんです。

研究所内の『光セラ』専用ラボ。春名さんが向かっているのは無菌状態をつくる機械。光触媒コートによる抗菌作用の実験を行う際に使います

光触媒コートのその「薄さ」にも、何か秘密があるのでしょうか。

岡山:『光セラ』は光触媒として酸化チタンを使っているのですが、厚く塗ると酸化チタンが汚れに接触しにくくなって、光触媒の効果を発揮しづらくなります。

春名:一般的な酸化チタンは白色の顔料としても使われる材料なので、酸化チタンが含まれる光触媒コートを厚く塗ると、濃い色の外壁材だと白っぽく見えてしまうことも、薄さを追求した理由でした。

岡山:光触媒コートもセラミックコートも、均一に薄く塗装するのが非常に難しいものですが、長年の技術開発の中で培った独自のノウハウで実現できました。『光セラ』のように、光触媒コートをさまざまな色や柄に施した外壁材が他にないのは、塗装の難しさがあるからだと思います。

太陽の光で光触媒の働きが起こるということで、気になるのは日陰部分での効果ですが…。

岡山:日陰でも出ます! 北面や日陰では、南面の紫外線強度の1/5〜1/2ほどになりますが効果がしっかりと発揮できるように設計しています。

春名:ちなみに空が曇っていても紫外線は出ているので、曇りの日は効果が落ちるということもありませんのでご安心ください。

こちらは可視光線と紫外線を当てて光触媒の効果を試験する機械。『光セラ』の光触媒コートは8時間の紫外線照射で菌が1/100に減少するそう。(抗菌効果:JIS R 1702に準拠し、ガラス基材上の塗膜で試験)

研究開発を重ねてたどり着いた色40年品質

長年技術開発を重ねてきたというお話でしたが、『光セラ』はいつ誕生したのですか?

春名:『光セラ』の歴史は長くて、実は30年以上あるんです。ケイミューは、外装材メーカーのクボタと松下電工(現在はパナソニック)の住宅外装建材部門が2003年に統合して設立した会社で、2010年に社名変更するまではクボタ松下電工外装という社名でした。松下電工が1989年に発売したのが、無機塗装を施した「ベルマティエ」という外壁材で、これが『光セラ』の起源になります。

岡山:その後、1999年に、無機塗装をさらに進化させた高耐候の「セラミックコート外壁材シリーズ」を発売しました。そして2002年、セラミックコートに光触媒コートを重ねた『光セラ』が生まれました。

『光セラ』は2022年6月時点で、フラットなものからタイル調、左官風や金属調など、489の色柄を展開

春名:セラミックコートも光触媒コートも、それぞれの技術として以前より研究開発が進められていましたが、二つを合わせて外壁材に使ってみたら? というアイデアが社内で持ち上がり、商品化にいたりました。

岡山:その後、光触媒コートの防藻機能を高めた「レジェール」を発売したり、セラミックコートの透明性を上げて色が鮮やかに見えるようにしたりと、現在も進化を続けています。

良い機能をどんどん合体させてきたのですね。最新の『光セラ』はどんな機能を備えているのですか?

岡山:最新の『光セラ』のポイントは、「色40年品質」です。「レジェール」と「光セラ18」というシリーズに、紫外線吸収剤を多く含んだ「高耐候性コート」を追加して、光触媒コートとセラミックコートとのトリプルコートで、さらに色あせしにくくしました。

「高耐候性コート」が追加された『光セラ』、「レジェール」と「ネオロック・光セラ18」の断面イメージ

40年! 一般的な外壁材だと10年や15年ほどで再塗装が必要だと聞きます。本当に40年、大丈夫なのでしょうか?

岡山:さすがに40年、実際の屋外の家屋に施工してテストをしたわけではないのですが、促進耐候性試験という、紫外線や雨といった外壁が受けるダメージを与える試験で40年相当の負荷をかけた結果、色あせが見られなかったということで、「色40年品質」の『光セラ』が生まれました。

春名:ただ、外壁の美しさを長く維持するには、外壁材と外壁材のつなぎ目を埋めるシーリングの性能も重要です。シーリングが劣化すると、ひび割れてそこから浸水したり、汚れがついて美観が損なわれたりします。ですので、耐候性と防汚性をアップしたシーリング「スーパーKMEWシール」も開発しました。『光セラ』と合わせて使うことで、住まいを長くキレイに保ちやすくなります。

紫外線や雨、熱など屋外の条件を人工的に再現して劣化具合を検証する促進耐候性試験を行う機械。40年分の試験には相当の時間を要したそう

手入れが少なく済む外壁材で未来を豊かに

「メンテナンスの手間が少なく長持ちする外壁材」が、『光セラ』が追求し続けてきたことなのですね。

岡山:一昔前の外壁材は、10年ほど経つと色があせてきてしまうものが多かったんです。シーリングも汚れたりひび割れたりして。そうすると、足場を組んで、シーリングをやり直して、塗装もしてと、メンテナンスに相当なお金がかかります。僕の家は、築15年目で外壁リフォームを行いましたが有機塗料が塗られた外壁材で、かなり塗膜が劣化していました。

松下電工時代に入社した岡山さんは勤続28年。光触媒コートなどの塗料を、外壁材に塗って定着させる技術を開発するチームのリーダー

ご自宅はどんな外壁リフォームを行なったんですか?

岡山:屋根も壁も剥がして新しいものに張り替えました。『光セラ』をちょっとバージョンアップさせたものを僕の家用に特別につくったんです。自宅を実験台にして性能を試してみようと思って。工期が長かったこともあって、足場代だけで100万円くらいかかりました。足場の外側に張る飛散防止シートがありますよね。夏だったので、あれのせいで家の中が暑くて、妻に随分文句を言われました(笑)。

春名:私も自宅の外壁を使って実験中です。100%セラミックの塗料に色を加えた特別仕様のセラミックコートを調合して、塗ってみました。まだ塗って3年ぐらいですが、今のところびくともしていないです。我が家は築20年以上で、それまで一度もきちんとした外壁メンテナンスをしてなかったので、目地は劣化していたし、外壁材も塗装が剥げて基材が見えちゃうぐらいになっていて、もうボロボロでした(笑)。建て売り住宅だったので外壁材が選べず、外壁材は他社のものでした。

岡山:我が家のように外壁材の張り替えとまではいかなくとも、再塗装やシーリングの補修でもそれなりにお金がかかるので、メンテナンスの必要性が少ない外壁材を選んでおくことが、やっぱり一番いいですよね。

春名:『光セラ』は他の外壁材と比べるとちょっと価格が高いので、新築時のコストはかかってしまいますが、築後何年も経った自分の家の状態を振り返ると、メンテナンスが少なく済む外壁材を選んでおきたかったな、と強く思います。

春名さんは塗料開発チームのリーダー。ケイミューのグループ会社であるパナソニック時代から始まり、塗料の研究開発に携わって33年目

ご自宅の外壁も実験台にしてしまうほど研究開発に熱心なお二人ですが、これからの『光セラ』で目指しているのはどんなことですか?

岡山:コストや品質、すべての面での向上を目指していますが、やっぱり一番は耐久性ですね。「色40年品質」のその先、「色60年品質」を目指しています。耐久性の高い外壁材をつくることは、家の寿命を伸ばすことにも、社会課題になっているCO2の削減にもつながります。

春名:あとは化粧技術、外壁材の意匠性のアップです。家を建てるとき、外壁材に一番に求められるものは何かというと、やっぱり見た目ですよね。機能はもちろんですが、『光セラ』のデザイン性にも着目してほしいなと思います。そうして気に入って選んでもらったものを、新築時のキレイさのまま、長く使えるものにしたい。そんな思いを持って、これからも研究開発に取り組んでいきます。

  • 光セラの「色40年品質」について:保証は「色10年保証」または「色15年保証」になります。
    対象商品は「光セラ18」「レジェール」です。
  • 『光セラ』はケイミュー株式会社の登録商標です。

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