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ケイミューの外壁材、どこが違う?選ぶポイントは?開発担当者に聞きました!【後編】

  • #窯業系サイディング
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1,000種類以上のラインナップを誇るケイミューの外壁材。それぞれの違いと、何を基準に選んだら良いかを製品開発担当の小島優さんと川崎裕介さんにインタビューします。前編では外壁材のメンテナンス性を決める「クリヤーコート」「オーバーコート」に注目し、違いを解説しました。後編では、デザインを担う部分である「基材(きざい)」と「着色層」に注目して解説していただきます。

「基材」の種類別の違いは?厚みで何が変わる?

前編で、ケイミューの窯業サイディングは基本的に4層から成り立っていると伺いました。一番下の「基材」も何種類かあるのですか?

川崎:ケイミューの一般的な戸建て住宅向け基材は4種類。製法は「押出製法」と「抄造製法」の2種類があって、柄の付け方がそれぞれ違います。厚みも21〜14mmと幅があります。

押出製法 抄造製法(しょうぞう)
基材名 レジェール ネオロック セラディール エクセレージ
断面
特徴 ・深彫りによる陰影を表現
・気泡を入れることで軽量化
・深彫りによる陰影、ランダムなデザインが可能
・中空構造で軽量化
深彫りによる陰影、ランダムなデザインが可能 プレス成形による定ピッチの造形が可能
厚み 21mm 18mm、16mm 18mm、14mm 15mm、14mm
対応
シリーズ
・光セラ ・光セラ
・親水コート
・親水パワーコート
・親水コート
・光セラ
・親水コート

ケイミューの住宅向け基材

多種多様な柄が揃う製品群。柄に合わせて基材を使い分けています

小島:クッキー生地のような硬さの生地を機械に入れて、丸太のような巨大ローラーで柄をつけながら押し出す方法を「押出製法」といいます。表面に凹凸をつけやすいので彫りが深いデザインが得意で、実際に建物に施工されると、光が当たった時にきれいな影が生まれます。押出製法による基材の一つ『ネオロック』は、基材の中に空洞(中空構造)を作ることで重量を抑えています。厚みがあるけれど重すぎないので施工しやすく、地震の揺れにも強いです。この中空構造は、ケイミューの特徴的な技術ですね。

川崎:もう一つの製法が「抄造(しょうぞう)製法」で、『エクセレージ』という基材に用います。多くの水を使って材料を配合した後、少しずつ水を抜くことで、柄をつけるのにちょうど良い水分量のシート状に成型します。その後、数千トンもの圧力をかけてプレスし、表面に型をつけるのが主な工程です。簡単にいうとスタンプ方式なので、均一な柄を作るのが得意です。

小島:抄造製法では、凹凸のエッジの角度が押出製法と比べて小さくなります。 角度にするとわずかの差ですが、実際に施工した時の陰影を比較すると、少し滑らかな印象ですね。

上が抄造製法、下が押出製法で製造した製品。同じ木目調でも凹凸の深さが違うことが分かります

基材の厚みが変わると、どんな違いがありますか?

川崎:外壁としての性能はほぼ変わりません。一番の違いはデザイン面で、厚みが大きい製品の方が深い凹凸を表現できます。

小島:少し前までは凹凸がある外壁の方が上質で意匠性が高いイメージでしたが、最近はフラットな外壁もトレンドです。どちらが上ということでなく、デザインに合わせて製法を変えているということですね。

川崎:あとは細かいことですが、一番薄い14mm厚の製品のみ釘を使って施工するので、表面に釘頭が露出します。目立たないように塗装もできますが、気になる方は15mm以上の厚みの製品をお勧めします。

凹凸が深く、艶のある塗装を施した製品(左)と、フラットなデザインにシンプルな塗装を施した製品(右)。いずれも違う魅力があります

柄の凹凸によって成形方法を決める

柄によって工程は変えているのですか?

川崎:ケイミューのデザインラインナップは幅広く、フラットやボーダー、タイル柄、木目調、コンクリート柄、レンガ柄など多彩です。先ほどお話ししたように、タイル柄やレンガ柄など凹凸が深い柄はロールを使った押出製法で作ることが多いです。

小島:ロールを使うと、あえて均質ではない柄も表現することができます。例えばレンガや石をモチーフにした外壁は、目地が整然と並ばない方が自然に見えますよね。そういった不均一な表情を表現する時は、ロールを使った製法が適していると言えます。

川崎:対して抄造製法はプレスして柄をつけるので、金太郎飴の要領で均一な柄を等間隔でつけることができます。

お話を伺った小島優さん(手前)と川崎裕介さん(奥)

ニュアンスのある色や天然木のようにムラのある色まで多彩ですが、着色はどのようにするのですか?

小島:塗装方式は大きく2種類あります。一つ目は『フルカラーセラジェット塗装』。プリンターで印刷するようなイメージで、一度で複数の色を塗装できます。自然の木や石などを再現した繊細な色を表現することができます。

川崎:二つ目はアクリルエマルション塗料を用いた塗装。単色のまま仕上げるものと、単色で塗装した上から様々な“トッピング”を施すものがあります。このトッピングにより、個性豊かなデザインを表現できるんです。

トッピング!それはなんですか?

小島:例えばこのレンガ柄。最初にレンガの目地色をイメージしたグレーを全面にスプレー塗装してから、凸の部分のみレンガの茶色になるよう、ロールを使って重ね塗りをしています。さらにその上から黒や黄色のスプレーで部分的にふわりと着色することで、本物のレンガが持つ微細な色の違いや風化度合いによって生まれる質感の差を表現します。つまり、3回の塗装を重ねてこの柄が完成しているんです。その上にレンガのざらざらとした質感の表現と保護の役割を兼ね備えたクリヤーコートを施し、さらに最上層に汚れを防ぐオーバーコートを施して完成します。

アンティーク風のレンガ柄。最初に全面をグレーで塗装し、上からロールで茶色を重ね塗りする

上の製品の着色工程イメージ

川崎:他にも様々な種類のトッピングがあります。例えば木目がモチーフのこの製品は、「グラデーション塗装」というトッピングを加えています。凹凸のあるデザインにさらさらとした塗料を施すことで凹んだ部分に塗料がたまり、色がやや濃くなる。逆に凸の部分には塗料がとどまらず、やや薄くなる。自然でリアルなグラデーションが表現できるんです。他に、部分的に光沢をつける手法、細かい模様を転写して自然な濃淡をつける手法なども。表現したい色や質感に合わせて、これらを組み合わせています。

木目柄の製品。「グラデーション塗装」により、溝部分に塗料がたまって自然な風合いを表現しています

デザイン=成形方法×塗装方法

なるほど、トッピングを重ねて多彩な色を表現しているんですね。

川崎:はい。色だけでなく質感をコントロールすることもできます。例えば木や石といった天然素材は艶のないものが多いので、それらをモチーフにしたデザインの場合、塗料の艶を抑えるために特殊な塗装を施します。逆に、部分的に艶を生かすタイル調のデザインもあります。

小島:色ムラを表現する場合、建物が完成した時に自然な色合いに感じるバランスが重要です。一般的な大きさの戸建て住宅が使う外壁は100〜200枚程度。施工した時に自然に見えるようにまんべんなくムラを作ることが大切ですが、これがなかなか大変で(笑)。工業製品でありながら自然な色合いを求められるのが、難しくも面白い点ですね。新柄を毎年発売していますが、デザイン担当と開発担当で何度も相談を重ねますし、製品化までに何度も試作します。通勤電車に乗っていても、窯業系サイディングの壁を見ると色ムラのバランスに注目してしまいます(笑)。もはや職業病ですね。

テイストが近いデザインも凹凸の深さや艶の度合い、エッジの角度によって印象が変わります

多彩な色表現と柄の凹凸の掛け合わせで、これだけ多くのデザインが生まれているんですね。

川崎:入社して驚いたのが、柄の凹凸を0.1mm単位で調整すること。実際、彫りの深さが0.5mm違うサンプル2枚を並べると、深い方が陰影がきれいなんですよ。外壁というスケールが大きな素材でも、彫りの深さでこれだけ差が出るものかと思いましたね。私は基材の材料の配合を担当しているので、求められるデザインに対応できる基材を開発するため、日々努力しています。

製造時の精度によって0.1mm単位で凹凸が変わるため、実物大のサンプルに紙を当てて影の出方をテストする工程も

多様なデザインは、材料や技術の開発努力によって支えられているんですね。ありがとうございました!

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