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戸建住宅で一番使われている外壁材「窯業系サイディング」とは?

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お家の印象を決めるうえで重要な外壁。いざ選ぶとなると「そもそも、外壁材にはどんな種類があるの?」と迷う人も多いのではないでしょうか。現在の日本の新築戸建て住宅で一番多く使われている外壁材は「窯業(ようぎょう)系サイディング」。どんな特徴があり、なぜ選ばれるのでしょう。ケイミューで外壁材の開発を担当している、川崎裕介さんと小島優さんにお聞きしました。

知っておきたい、住宅の主な外壁材ラインナップ

日本の新築戸建て住宅で「窯業系サイディング」が使われている割合は、実に78.4%(※1)。10軒中およそ8軒に使われている計算です。そもそも、住宅の外壁材にはどのような選択肢があるのでしょうか。

※1 日本サッシ協会の2023年3月版『住宅用建材使用状況調査』より

入社8年目の川崎裕介さん。主に、窯業系サイディングの「基材」と呼ばれるベース部分の材料技術の開発を担当しています

川崎:まずは、住宅の外壁に使われる主な材料を種類別に見てみましょう。外壁の材料は、工法別に大きく「乾式工法」と「湿式工法」に分けられます。

〈乾式工法〉
工場で生産された建材を現場で取り付ける工法。材料の品質にばらつきが少なく、施工者の技量に左右されにくいのがメリットです。湿式工法に比べて工期が短くコストも抑えられる点も特長で、現在の住宅でスタンダードな工法です。

〈湿式工法〉
現場で材料と水を混ぜ合わせ、職人が刷毛やコテなどで下地材の上に塗り上げていく工法。日本の伝統的な漆喰や土壁はこちらに当たります。職人の専門技術が必要とされ、工期も比較的長く必要ですが、手仕事ならではの個性や表情を楽しめます。

外壁に使われる主な材料(種類別)

それぞれの材料の詳しい特徴と施工事例はこちらの記事へ

窯業系サイディングが選ばれる4つの理由

たくさんの選択肢がある中で、なぜ窯業系サイディングが8割ものシェアを占めているのでしょうか。川崎さんと小島さんが、4つのポイントで解説してくれました。

・ポイント1:デザインバリエーションが豊富
・ポイント2:耐震性・防火性が高い
・ポイント3:耐久性が高いから数十年後もきれい
・ポイント4:工期が短く、職人の負担が少ない

商品開発グループの課長を務める小島優さんは入社17年目。住宅を含む一般顧客向け製品の開発に、基材から塗装までトータルで携わっています

ポイント1:デザインバリエーションが豊富

ひと口に窯業系サイディングと言っても、高級感のある天然石調やタイル調、ナチュラルな木目調、モダンなストライプやフラットタイプなど、色や柄は多種多様。ケイミューの窯業系サイディングは、カラーバリエーションを含めて現在1,147種類(2023年11月現在)ものラインナップを誇り、もはや選べない柄はないのでは?と思うほど。モチーフとなるタイルや木に風合いを近づける技術も進化し、遠目に見るとサイディングと気づかないものも増えています。

ケイミューの窯業系サイディングの一例。木目調や天然石調、フラットタイプまで多種多様。それぞれカラーバリエーションも選べます

川崎:例えば天然木やタイルを外壁に使おうとすると、材料費はもちろん、技術を持った職人に依頼するためコストが上がり、工期も長くかかります。窯業系サイディングなら、コストも工期も抑えながら素材に近い質感やデザインを叶えることができるんです。

小島:デザインの自由度が高い理由は、材料と製法にあります。ケイミューの製品を例に挙げると、固める前の材料は粘土のような状態か、水っぽいシャバシャバした状態です。これらを板状に成形した後、そこに型押しのようにプレス機で模様をつけたり、重さのあるローラーを転がしながら材料を伸ばすことで模様をつけたりしていきます。

柄の凹凸も、0.1o単位までこだわった設計をしています。天然素材が風化したような表情や、並べて張った時に自然に見えるランダムな表情も表現できますし、さらに複数の塗装方法を組み合わせることで、よりリアルな質感を表現できる。柄や塗装仕様によって価格帯も幅広く、予算に合わせて選択できるのがメリットですね。

ケイミューの施工事例写真。幅広い柄や色がそろう窯業系サイディングは、シンプルモダン(左上)、ナチュラルモダン(右上)、和モダン(左下)、アメリカン(右下)と、あらゆるテイストのデザインに合う製品が選べます

ポイント2:耐震性・防火性が高い

外壁に求められる重要な機能が耐震性。ポイントになるのが、外壁材自体の軽さです。

川崎:窯業系サイディングは比較的軽量で、ケイミュー製品の場合、外壁にモルタルを使った場合と比べると1棟あたりの重量は約1/2以下(※2)。さらに中空構造の製品も開発し、より軽量化を図っています。建物の総重量を軽く抑えると、地震の時の揺れも小さく済みます。振り子をイメージすると、重いおもりをつけた方が大きく揺れますよね。軽量なので地震の揺れに遭っても剥がれたり落ちたりしにくく、外壁と外壁を繋ぐシーリングが緩衝材の役割も果たしています。1995年の阪神淡路大震災でも、窯業系外壁材を使った住宅に大きな被害がなかったという調査結果が出ているんです。

※2 1棟当たりの外壁面積を150m²として換算。詳細はこちらの記事参照

窯業系外壁材の被災状況

窯業系外壁材の家はほとんど無傷 約86%/亀裂発生 約10%/一部脱落 約4%

東京大学「1995年8月窯業系サイディング被災調査」より(数値は調査地域の非倒壊住宅のうちの割合を示したもの)

ケイミューの「ネオロック」シリーズは中空構造にすることで軽量化。断面を見ると、部分的に空洞になっていることが分かります

さらに、防火性も安心です。ケイミューの窯業系サイディングは火災に対する安全性が認められ、国土交通大臣認定を取得しています。

ポイント3:耐久性が高いから数十年後もきれい

30年、40年と長く家を守る外壁。雨風に長年さらされても美しさを保つ性能や、紫外線による色あせ対策も重要です。

小島:日本の伝統的な建築で使われる「焼杉仕上げ」は、木材の表面を焼くことによって腐りにくくし、害虫から外壁を守りました。窯業系サイディングも基本的な考え方は同じ。基材と呼ばれるベース部分にコーティングを施すことで、色あせやカビといった外的要因がもたらすダメージから保護します。ケイミューの「光セラ」というシリーズは、独自のセルフクリーニング機能を持っているため、美しさをより長持ちさせることができます。

川崎:外から見ると分かりにくいのですが、伸び縮みしにくい点も重要です。例えば天然の木材は季節や天候で水分量が変化し伸び縮みするのですが、たとえ1枚の変化が数oでも、家全体で見ると影響が出てしまうんです。外壁材と外壁材の間に隙間が空くと漏水し、柱などに不具合が起こってしまう可能性があるからです。けれど工業製品である窯業系サイディングは、セメント系材料を適切な比率でブレンドし、高温高圧の窯に入れて化学反応をしっかり起こすことで、伸び縮みしにくい製品になります。

外壁材と外壁材をつなぐシーリングの10年経過後の比較。左の一般的なシーリングはひび割れが起きています。右はケイミューの「スーパー KMEWシール」。紫外線の影響を抑え、汚れにくいのが特徴です

ポイント4:工期が短く、職人の負担が少ない

前述の通り、乾式工法で施工する窯業系サイディングは工期の短さも大きなポイント。特にモルタルや漆喰といった湿式工法で施工する材料は現場で調合する時間や養生する時間が必要ですが、乾式工法では大幅な短縮が可能です。

川崎:窯業系サイディングは工場で作った製品を現場に運び、金具や釘で取り付けるのでスピーディーです。戦後の高度経済成長期に短期間で大量の住宅が必要になってから、工期が短い窯業系サイディングが普及し始めたんですよ。近年は職人さんの高齢化が進んでいるため、施工現場の負担軽減はケイミューとしても大切にしているテーマです。

窯業系サイディングの原料は?

窯業系サイディングの原料として主に使われるのは、セメント質原料、各種機能性骨材、そして繊維質材料です。

川崎:繊維質材料を入れると板が適度にしなるため、衝撃に対する強度が上がります。ケイミューの製品は約45cm×300cmと細長いのですが、適度にしなることで、職人さんが一人で運んだり持ち上げたりする時に扱いやすいんです。

小島:加工性も上がります。必要な寸法に合わせて職人さんが現場でカットする時、繊維質材料が入っているおかげでガラスのようにパリーンと割れにくくなるんです。

左がセメント質原料のみを使ったサンプル。カットしようとすると粉々に割れてしまいます。右は繊維質原料を配合したサンプル。まっすぐきれいにカットできることが分かります

デザインバリエーション、コスト、機能性、施工のしやすさと、外壁材に求められる要素をバランスよく兼ね備える窯業系サイディング。そんな「総合力」こそが選ばれる理由です。もちろん、メーカーや商品によって性能はさまざま。優先したいことや予算に合わせて選択してみてください。

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