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家事ラク間取りの実例を紹介!
毎日を快適にする間取りづくりのヒント

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家事を助ける家電や便利グッズは数多くありますが、「家事ラクな暮らし」を叶えるために一番重要なのは「間取り」。料理、洗濯、掃除、片付け…家事別にみる家事動線のポイントは?「家事効率の良い間取り」とはどんな間取りなのか、年間100棟以上の注文住宅を手掛ける善匠のデザイナー、川原功太郎さんに聞きました。

“自分たちの暮らしに合った”家事ラクな間取りを考える

お話を伺ったのは、愛知県を中心に岐阜県、三重県で注文住宅づくりを展開している善匠のメインデザイナー、川原功太郎さん。善匠のお客さまは20代〜30代の若いファミリー世代が中心。共働きのご家族が増えており、家事効率を重視する傾向は高まっていると話します。

善匠でメインデザイナーを務めている川原功太郎さん。ZENSHOO蟹江モデルハウスでお話をお伺いしました

「善匠のお客さまはお若いご家族が多く、家の大きさは建坪30坪〜40坪と特別広いわけではないことも多いので、限られた面積の中で必要な量の収納確保と効率的な配置、そして家事効率の良い間取りの提案を心がけています」(川原さん、以下同)

具体的には「部屋はすっきり」「収納要素をまとめる」「空間と空間をつなぐ」「動線を短くする」がポイントだと川原さん。善匠では平屋を選ぶ若い世代のお客さまが増えており、特に平屋は動線も長くなりがちなため、廊下で各部屋を繋ぐのではなく納戸やクローゼットなどの収納を経由して出入りできるようにするなど、収納の確保と効率の良い動線を両立させているそう。

下の『ミニマルなロの字型の平屋』は、そんな家事ラク間取りの好例。収納は、玄関のシューズインクローゼット(以下、SIC)、キッチンの背面収納、家族全員の衣服をしまうウォークスルークローゼット(以下、WSC)と、要素・要所ごとに集約。キッチンはLDKやスタディコーナーを見渡せる位置にあり、アイランド型で移動もスムーズです。ランドリールームと一体になった洗面室は、室内干しとガス乾燥機を使って洗う・乾かすがここで完了。乾いた服は隣のWSCにすぐにしまうことができます。さらに、個室側からは着替え、洗顔、歯磨きといった生活行為も行いやすい間取り。こうした1フロアで家事が完結する間取りは、2階建て以上の家づくりでも参考になりそうです。

事例名:#104 ミニマルなロの字の平屋

とはいえ、家事の仕方や物の片付け方は人それぞれ。漠然とアイデアを模倣するだけでは、使いにくい間取りになってしまうことも。「自分にとっての家事ラク間取り」を見つけるには、どのように間取りを考えていけばいいのでしょうか。

「お客さまとのお打ち合わせの際、私たちがまずお伺いするのは、ご家族構成や生活スタイルについて。お仕事に出かける時間や帰宅時間、ご家族全員が揃って食事をとっているのか、お子さんを連れて帰宅した後の動きや、買い物から帰ってきたらどういう作業をしているのか、どこに何をしまっているのか。そうやって暮らしの様子を細かくヒアリングしていきます」

そこから見えてくるのは、今の暮らしに感じている不満点と改善したいこと。そこから新しい住まいでの暮らしのイメージを具体的にしていくことが、「自分にとっての家事ラク間取り」を見つける近道のようです。

家事別でみる家事ラクな間取りのポイントと実例

ここからは、「キッチンまわり」「洗面まわり」「掃除・片付け」それぞれの家事をラクにする間取りづくりのポイントと間取りのテクニックを、善匠の実例を添えてご紹介していきます。

キッチンまわり

キッチンまわりの家事は、料理、洗い物だけではありません。食材の管理や、キッチンまわりの整理整頓も家事の一環です。奥様と二人の娘さんと暮らし、ご自宅では日常的にキッチンに立っていると話す川原さん。そうした家事経験は、お客さまの住まいをプランニングする際にも役立っていると話します。

「キッチンは家事のセンターポジション。小さいお子さんがいるご家庭なら、リビングに目が届く位置にキッチンを配置することも家事ラクのポイントです。キッチンそのものの計画では、作業動線を短くすることが大事。対面キッチンの背面側に引き戸付きの収納をつくり、作業動線を短くするケースが多いですね。まとめ買いが多いご家庭では、キッチンのそばにパントリーを計画することも。パントリーの一角をお子さんのプリントを貼ったり保管する場所として利用するご家庭もあります」

最近では、冷凍食品の保存用に冷凍ストッカーを置くご家庭も増えていると話す川原さん。今は必要なくても、将来子供が増えたり成長して、買い込む食材の量が増える可能性もあります。お客さまとの打ち合わせではそういった可能性も提示しながら、キッチンまわりの収納のボリュームやレイアウトを検討していくそう。

そして、盲点になりがちなのが「ゴミの処理」。分別方法によってはゴミ箱の数が変わり、キッチンに必要になるスペースも変わってきます。また、回収日が少ない種類のゴミはしばらく保管しておく必要があります。

「ゴミの分別方法や回収日は自治体ごとに異なるので、現在の住まいと新居の建築地が異なる自治体だった場合、あらかじめ調べておくといいでしょう。最近はセキュリティの観点から勝手口をつくらないご家庭も増えており、ゴミの一時置きができるスペースをつくっておくと便利ですよ」

【実例】2方向から出入りできるキッチン。丸ごと隠せる収納ですっきり

玄関側からもリビング側からも出入りできるアイランドキッチン。リビングやホールで遊ぶ子どものところへも移動しやすい間取りです。電子レンジや炊飯器などの調理家電は、キッチン背面の引き戸の中に収納。引き戸なので開けても戸が邪魔にならず、閉めれば空間がすっきり。キッチンも手元を隠す高さの壁で囲まれているので、片付けに過敏にならなくて済みそうです。

事例名:#76 中庭とスケルトン階段

【実例】買い物帰りの荷物整理も楽々な2WAYパントリー

ホール側とキッチン側から出入りができるパントリーを備えた間取り。パントリーの出入り口は引き戸を採用しており、買い物帰りに荷物で手が塞がっていても開けやすくなっています。こちらのパントリーは約3畳あり、食材以外の日用品も十分収納できる容量。買ってきた物を各所に分散して片付ける手間が省けます。

事例名:#90 大人ナチュラルなトンガリハウス

洗面まわり

洗面まわりの家事といえば筆頭するのが洗濯ですが、そこから派生して、洗濯物の回収、洗濯物を干す、乾いた服の片付けといった作業があり、服を干す場所や服をしまう場所も家事効率に関係してきます。

「最近増えているのが、洗濯は夜に行なって室内干しをするというご家庭。それを反映して、ランドリールームをつくるご家庭が多くなっています。ハンガーパイプを備えて室内干しができるようにするほか、ガス乾燥機を採用するケースも多いです。ほかにも、汚れ物を洗うスロップシンクを設けたり、アイロンがけができるカウンターを作るなど、ランドリールームの機能を充実させる傾向があります」

ランドリールームの間取りは、「ランドリールームを独立させる」「洗面室を独立させて脱衣室兼ランドリールームをつくる」「洗面室・脱衣室・ランドリールームを一体にする」といった、いくつかの形があります。室内干しをするご家庭では「洗濯物を干すためにバルコニーに出る」という行為がなくなるため、小さな子どもから目を離す不安を減らすことにもつながります。

「近頃は、洗濯物は畳まずにハンガーにかけたまましまうのが主流です。ランドリールームの近くにクローゼットを配置すれば、乾いた服の片付けもラクになります。個室には普段あまり着ない服やアウターなどをしまって、普段着は家族分をまとめてファミリークローゼットに収納するというスタイルも、服の片付けと管理がしやすい方法です」

【実例】キッチンから横移動でアクセスできるランドリールーム

キッチン・洗面室・脱衣室兼ランドリールームの仕切りは引き戸なので、出入りが楽々。キッチンでの作業と並行して洗濯ができそうです。ハンガーパイプで洗濯物をハンガーにかけてから、浴室乾燥機を使って乾かしたり、バルコニーに運んだり。服を畳む作業やアイロンがけができるカウンターは、下部を普段着の収納スペースにすれば服の片付けや着替えにも便利です。

事例名:#99 吹き抜けでツナガル暮らし

【実例】独立したランドリールームで「洗う」「乾かす」をまとめて行う

脱衣室を兼ねた洗面室の隣に、独立したランドリールームを配置。室内干し用のハンガーパイプを天井に取り付け、ガス乾燥機も採用して、洗う作業から乾かすまでが完結するスペースにしています。乾いた服は、ランドリールームにつながっているサンルームを通って、玄関側からウォークインクローゼット(以下、WIC)に運べる動線。移動距離は長くてもスムーズに移動しやすいよう配慮された間取りになっています。

事例名:#85 土間が繋がる平屋のお家

掃除・片付け

そしてもうひとつ、効率や手間が気になるのが「掃除」「片付け」の家事。今回は、家全体の掃除や片付けがしやすい間取りづくりのポイントについてお話を伺いました。

「部屋が細かく分かれた複雑な間取りは、隅がたくさんできて埃が溜まりやすくなってしまいます。家の中の動線を短くすることは掃除のしやすさにもつながり、お掃除ロボットを使う際も効率よく家を回ってくれます。また、ドアよりも引き戸にした方が、開けっぱなしにしやすく掃除がラクになります」

掃除に使う道具をしまう場所にも留意したいところ。リビングのそばに掃除用品の収納を設けるのも手ですが、ランドリールームに掃除用品のコーナーをつくるのもおすすめだそう。

「片付けやすい間取りづくりのポイントはやはり、収納をどう計画するか。使いたい物を使いたい場所に収納することが大事ですが、いろんなところに細かく収納を設けるのではなく、まとめることもポイント。例えばリビングに扉付きの隠せる収納をつくっても良いのですが、収納があることを扉が主張してしまいます。壁面に何もないほうが空間はすっきりして見えます」

また、「収納は立体でイメージするのが大事」と川原さん。間取りで見た時には収納のボリュームが少ないように感じても、実際は立体で空間を使うことになります。善匠では立面図を用意し、お客さまが棚の数や位置、収納するものを具体的にイメージできるようにして、何をどこにしまうか細かく決めていくそうです。

「収納がたくさんあればいいというわけではありません。“たくさん”がどのぐらいの量なのかはご家庭によって違いますし、どんな物をどうしまいたいのかも異なるので、いつも収納についてはじっくりヒアリングをしています。収納を必要以上につくると、かえって物を溜め込んでしまう可能性もあります。片付けやすい家にするには、物を増やしすぎない意識を持つことも大切だと思います」

【実例】リビングの一角に小上がりをつくって床下を収納に

子どものお昼寝スペースや遊び場としても活躍する、畳敷きの小上がりスペース。床下の収納は上から開けるスタイルではなく、側面から出し入れできる引き出しに。お子さんのおもちゃや絵本を収納しているそうです。こちらのお宅の小上がりはロールスクリーンで仕切ってゲストルームとしても使用できるようになっています。

事例名:#103 ガレージを楽しむ

【実例】自転車もアウターもここに。丸ごと隠すこともできる広々SIC

広々とした土間床のSICをつくった事例。ロールスクリーンでSICを隠せるようになっており、来客時はすっきりした玄関でゲストをお出迎えできます。リビングに持ち込みがちな上着は、こちらのお宅のようにSICに片付けるという手も。広いSICは宅急便など荷物の一時置き場としても活躍します。ウォーターサーバーの水のストック置き場をSICに確保するケースもあるそうです。

事例名:#100 Brick Cool Style

【実例】仕事のカバンや通園グッズの収納は、管理がしやすいLDKそばに

LDKと洗面脱衣室の間に設けたWSCに、子どもの通園グッズや衣服、アウターや仕事のカバンなどを収納。玄関から近く、帰宅後や朝の身支度がしやすい間取りになっています。家族の普段の居場所であるLDKのそばにあるので、持ち物の確認や管理がしやすいのもポイント。救急箱や書類など、リビングまわりに置いておきたいものを一緒にしまうのも良さそうです。

事例名:#74 大人サーフで暮らしを楽しむ

ココもチェック!間取り以外で気にかけたいこと

間取り以外で、家事ラクな家づくりのために気をつけたいポイントについてもお伺いしました。

「コンセントの数と位置です。近年、昔は無かったような家電が増えて、特にキッチンは電気ケトルや電気圧力鍋といった時短調理機器の使用も増えています。コンセントの数と位置だけでなく、家電を使いやすい場所にレイアウトすることもしっかり検討したいですね。あらかじめ、家で使用する電気機器をリストアップしておくのがおすすめです」

また、掃除がしやすくメンテナンスがラクな素材も気になるところ。善匠では、床には無垢フローリングや天然木を表層に使った突き板フローリング、壁は漆喰を採用するお宅が多いそうです。

「漆喰は優れた調湿機能を持ち、カビなどの発生を抑制する効果もあることから、おすすめしています。日常的に手に触れるところは、クロスと同様に汚れてしまいやすいのですが、軽微な汚れなら固く絞った雑巾で拭き取れます。突き板フローリングはメンテナンスがしやすい塗装が施された商品を採用しており、無垢フローリングはオイル仕上げを施しています。日々のお手入れは乾いた雑巾やフローリングワイパーでOKです」

丁寧なヒアリングと暮らす側に寄り添った視点で、家庭ごとの「家事ラクな間取り」づくりに取り組んでいる川原さん

今回は家事ごとの間取りづくりのポイントをご紹介しましたが、家全体で見た時の間取りの傾向については「個室は小さくして、家族がリビングに集まりやすい間取りにするご家庭が多いですね」と川原さん。

「個室を小さくした分のスペースを、ランドリールームやパントリー、クローゼットに使うような形ですね。家事や収納のためのスペースをどのぐらい確保できるかで、家事効率が大きく変わってくると思います」

家事効率がいい家をつくれば、家族が一緒に過ごしたり、お気に入りの住まいでくつろぐ時間が増えることになります。また、スムーズに家事ができることは、家事を行う時間も楽しくしてくれるのではないでしょうか。ご紹介した間取りの実例を参考に、自分たちの暮らしにぴったりな家事ラク間取りを考えてみてください。

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