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園芸のプロに聞く!シンボルツリーからはじめる小さな庭づくり

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家の外観やそこでの暮らしに彩りを添えてくれる「庭」。ですが「素敵な庭には憧れるけど、何から考えればいいかわからない」という人は多いのではないでしょうか。そんな方へおすすめしたいのが、「シンボルツリー」を中心に据えた庭づくり。今回は体験型ガーデンセンター「the Farm UNIVERSAL」千葉店の店長・海老沼賢さんに、シンボルツリーの選び方とおすすめの樹木をお伺いしました。

我が家に似合うシンボルツリーの見つけ方

今回、お話をお伺いしたのは、「the Farm UNIVERSAL」千葉店店長の海老沼賢さん。一戸建てやマンションの造園設計に携わっていた経験を持つ庭づくりの専門家です。ガーデンセラピーの有資格者としての知識を活かし、植物の効能を交えながら、日々お客さまの庭づくりのお悩みや相談に応えています。

「シンボルツリーとは、玄関周りや庭の中心に据える比較的背の高い樹木のこと。その名の通り、家の象徴になりながら、建物の魅力を引き立ててくれる存在です。植物のない庭や外構は殺風景で味気ないけれど、シンボルツリーとその周囲に植栽がある住宅は、住み手が四季の移ろいを感じたり、緑の風景に癒されるだけでなく、街の美しい景観づくりにも寄与します」(海老沼さん)

シンボルツリーを中心に中低木やグラウンドカバーや花苗などを組み合わせるのが、庭づくりの基本。けれども園芸店には無数の植木が並んでいて、その中から自分の家に合うシンボルツリーを選ぶのは大変に思えます。手入れの方法や家の外観との相性なども気になりますが、「まずはフィーリングで選びましょう」と海老沼さん。

「あまり難しく考えず、シンプルに自分が好きだと思う木をいくつか選んでみましょう。次に考えるのが、どんなふうにシンボルツリーを楽しみたいのかということ。樹木には大きく分けて常緑樹と落葉樹があり、1年中緑を愛でたいのならば常緑樹。新緑、紅葉、落葉と、四季を感じたければ落葉樹を選ぶといいですね。その中から家のテイストや植える場所に、樹木の特性を加味して絞り込んでいくと、自分の家にぴったりなシンボルツリーに出会えるはずです」(海老沼さん)

「the Farm UNIVERSAL」千葉店では、オージープランツというオーストラリア原産の植物を中心に、他の園芸店では扱っていない珍しい樹木を数多く扱っており、こうした木々をシンボルツリーとして植えたいというご希望をいただくことも多いそう。「the Farm UNIVERSAL」には造園部門「the Farm GARDEN」があり、お店で庭づくりの相談をすることもできます。

「同じ樹種でも一本一本、葉の形や枝振りが違ったりするので、店頭でさまざまな樹木を見ながら、お気に入りの一本と出会ってほしいですね。手入れの手間がかからない木を求める方もいますが、木は生き物なので、まったくの手入れいらずとはいきません。木との付き合い方についても、ぜひ私たちにご相談いただければと思います」(海老沼さん)

「the Farm GARDEN千葉」による庭づくり事例。シックな外観に、シダ植物のディクソニアをメインにしたコーディネート

海老沼さんがおすすめするシンボルツリー10

シンボルツリー選びの参考に、今回は「the Farm UNIVERSAL CHIBA」の店頭に並ぶ樹木から、海老沼さんおすすめの樹木をご紹介。気になるお手入れ方法や、家づくりの際の参考にしたい、家の外観テイストとの相性についてもコメントをいただきました。

1. アカシア(ミモザ)

アカシアはオーストラリアやアフリカなどの温帯の地域に分布するマメ科の植物で、『ミモザ』とも呼ばれます。春先にポンポンとした黄色い房状の花を咲かせるアカシアはシンボルツリーとして人気があります。成長が早いので放っておくとどんどん背丈が伸び、剪定が必須です。花をきれいに咲かせるコツは、その年の花が終わったらすぐに短く剪定すること。水が好きな植物で、水が行き渡らないと葉を落としてしまうため、近くに水場をつくるなど、水やりがしやすい環境を整えるといいでしょう。

<家の外観テイストとの相性>
シルバーリーフの葉を持つアカシアは、白い外壁の家やダークで高級感のある外観の家にマッチします。

2.オリーブ

高額ですが、流行り廃りがなく、シンボルツリーとしても人気が高いのがオリーブです。比較的乾燥にも強いため、毎日ではなく何日かに一度、しっかりと水やりをすれば大丈夫です。扱いやすい樹木ですが、オリーブゾウムシという害虫が入ると枯れてしまうので注意が必要です。木の下に木屑が落ちていたら、ゾウムシが木の中に入って内部を食べている可能性があるので、早めに薬を噴霧して駆除しましょう。

<家の外観テイストとの相性>
和風の家以外ならばどんな家にもマッチするオリーブ。ウッドフェンスなど木の風合いはもちろん、アルミ製のフェンスにも馴染みます。

3.ユーカリ

丸みを帯びた葉っぱがかわいらしい印象のユーカリ。最近は葉っぱがハート型のユーカリ『ポポラス』が女性を中心に人気を集めています。ある程度背丈が低い状態で購入しても、一年で1mも成長するとても生命力が高い樹種です。なので軒にぶつからない場所に植え、こまめに剪定してあげることが大切です。剪定した枝葉を束ねて吊るせば、おしゃれなスワッグになります。葉っぱを手で揉むとスーッと清涼感のある香りも楽しめますよ。

<家の外観テイストとの相性>
シルバーがかった丸葉のユーカリは、ナチュラルテイストの北欧系の住宅と相性が抜群。コンクリート打放しや黒系の外壁のモダンな住宅にもよく似合います。

4.アガベ(リュウゼツラン)

続いてはちょっと変化球で、メキシコ原産の多肉植物であるアガベ。テキーラの原料になる植物で、最近は植栽としての人気が高まっています。南米原産の植物とあって寒さに弱いため、品種によっては冬の寒さや雪の影響で葉が溶けてなくなってしまったり、黒ずんでしまう場合もあります。お住まいの地域の最低気温を確認しながら、その寒さに耐えられる品種を選ぶことがポイントです。例えばアガベ・アメリカーナ(写真中央)はマイナス5度まで耐えられる、比較的寒さに強い品種です。また葉に雪が積もっても黒ずんでしまうので、雪の影響を受けにくい軒下に植えるなどの工夫をするといいですね。

<家の外観テイストとの相性>
西海岸風のテイストづくりにおすすめ。石と石の間に植物を植え込むロックガーデンや、カリフォルニア風のドライガーデンのアクセントとしてよく使われています。

5.ハイノキ

北側や東側にあることが多い玄関周りは、日陰や半日陰が好きな樹種をご提案しています。中でもハイノキは日陰、半日陰を好む植生で、常緑樹では珍しく、葉っぱが細かくさわさわとした優しい雰囲気を出せるので、日陰に植えるシンボルツリーとしておすすめしています。4月から5月に白い花を咲かせ、秋には紫色の実が生ります。近畿以西の温暖な地域を原産とした樹種なので、寒さに弱く寒冷地には向きません。

<家の外観テイストとの相性>
比較的どんな外構にも合わせやすく、とりわけ和風の住宅によく似合います。

6.シマトネリコ

シンボルツリーの代表ともいえるのがシマトネリコです。日光が大好きな樹種なので、地植えをすれば自然の雨だけで十分育ちます。葉が密集していてボリューミーなので、目隠しにも最適です。とても生命力が強く成長が早いので、大きくなりすぎないように剪定で背丈をコントロールする必要があります。半落葉高木で、寒い季節や春の新芽の時期に落葉することがあります。

<家の外観テイストとの相性>
マツやツバキなどと組み合わせれば和の印象が強くなり、オリーブやコニファーの樹などと合わせれば洋風のイメージに。どんなテイストの住宅にもコーディネートがしやすい万能な樹種です。

7.メラレウカ(ティーツリー)

メラレウカはオーストラリア原産のフトモモ科の植物で、精油の原料の木としても知られています。キャプテン・クックが葉をお茶として飲んだことからティーツリーとも呼ばれています。品種が約140種類と多く、園芸品種としてはメラレウカ・ブラックティーツリー(写真)やメラレウカ・メディカルティーツリーなどが人気です。細かくて尖った葉を持ち、春先にふわふわとした綿毛状の花を咲かせます。日光が好きでよく育ち、地植えをして放っておくと10m以上まで成長するので、剪定による高さのコントロールが必要です。

<家の外観テイストとの相性>
穏やかな雰囲気がある樹木で、和風以外のどんな住宅のテイストにも合いますが、とりわけとりわけ木目の外壁との相性が抜群です。

8.ハナミズキ

四季の移ろいを楽しみたいのならば、ハナミズキをおすすめします。落葉樹のハナミズキは、耐寒性、耐暑性があり、北海道以外ならば比較的どんな場所にも根付きます。真夏の暑い時期はしっかり水やりをする必要がありますが、地植えをしていればそれ以外の季節は自然の雨だけでもよく育ちます。春に白や赤、ピンクの花を咲かせ、秋には真っ赤に紅葉し、冬は葉を落としますが樹形が美しいのでその立ち姿だけでも絵になります。

<家の外観テイストとの相性>
洋風の住宅にも合いますが、和の雰囲気にも馴染んで調和します。

9.ドドナエア

ここ数年でじわじわと注目が集まっているのが、オーストラリア原産のドドナエアです。たくさんの品種があるドドナエアですが、当店では冬場に葉が銅褐色に紅葉するドドナエア・プルプレアが人気です。常緑樹なので冬場に葉が落ちることがなく、シンボルツリーとして玄関周りに植えれば、殺風景な冬の外構に彩りを与えてくれます。比較的乾燥した場所を好むので、頻繁に水やりをしなくてもよく育ちます。

<家の外観テイストとの相性>
どんなテイストの外観にも合いますが、白やベージュなど、背景となる外壁が明るい色味の方が冬場の紅葉がより引き立つでしょう。

10.バンクシア

他と違う個性的なシンボルツリーがほしい、という人におすすめしたいのが、バンクシア。オーストラリア原産の常緑樹です。写真に写っている茶色いブラシのようなものが実で、葉と花も個性的な形をしており、シンボルツリーにすればインパクトは抜群です。大きな筒状の花と実は、剪定して吊るしておけばドライフラワーとしても楽しめますよ。日当たりがよく、水はけのよい場所に地植えをすればよく育ちます。しっかり根をおろせば寒さにも耐えられる丈夫な木です。

<家の外観テイストとの相性>
個性的な樹木で、モダンなテイストの外観に映えます。同じく彫刻的なアガベと組み合わせたカリフォルニア風のドライガーデンやロックガーデンがおすすめです。

シンボルツリーの魅力を引き立てるコーディネート

シンボルツリー選びのほかに気になるのが、その周辺のコーディネート。シンボルツリーをより魅力的に印象付けるためのテクニックについても聞いてみました。

「シンボルツリーを中心に、その木より背が低い中木、低木、足元を彩る下草やグラウンドカバー類を組み合わせることで、より華やかで洗練された空間を演出できます。コーディネートのポイントはシンボルツリーとの相性を見極めること。シンボルツリーの幹肌を見せたいのならば、中低木で覆って隠れてしまわないように樹木を配置したり、葉のボリュームの少ないものを合わせるといいでしょう。最近人気のオージープランツやアガペを使った西海岸風のドライガーデンをつくるのなら、土の上にワイルドな石を敷き詰めたロックガーデンにするのもおすすめです」(海老沼さん)

「それから、例えばアガベなど、背の低い植物を植える時は、隣り合う植物の間隔を詰めすぎず余裕を持って植えると、葉がぶつからずに立ち姿を楽しむことができます。またナチュラルな雰囲気に仕上げるなら、シンボルツリーの足元には『グラス』と呼ばれる草類を植えたり、ウエストリンギアのような葉が密集した常緑低木などでボリューム感を出すといいでしょう。葉の緑が濃いシンボルツリーに葉が白っぽい低木を合わせてコントラストを楽しんだり、流木を添えるのも個性が出ておすすめです」(海老沼さん)

知れば知るほど奥が深い庭づくりですが、シンボルツリーを起点として考えていくと、おのずと自分が求める庭のイメージが湧いてきそうです。一期一会のシンボルツリーを見つけに、「the Farm UNIVERSAL」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

“体験型”ガーデンセンター「the Farm UNIVERSAL」

「全ての人が楽しめる植物の楽園」をテーマに掲げ、東京、千葉、大阪、福岡の全国4カ所に展開しているガーデンセンター「the Farm UNIVERSAL(ザ・ファーム・ユニバーサル)」。今回、取材にお伺いした千葉店は、千葉市稲毛区の「フレスポ稲毛」内にあります。3500uという関東最大規模の面積を誇るガーデンセンターとして、千葉県内をはじめ、関東圏から植物好きな人たちが訪れています。

「食べる・買う・遊ぶ・学ぶ・撮る」という5つのコンセプトを持つ「the Farm UNIVERSAL」。施設の内外には、花苗や花鉢にハーブや果樹、常緑樹や落葉樹といった庭向けの樹木のほか、観葉植物、サボテンや多肉植物などの屋内向け植物が溢れんばかりに陳列されており、ポットや土いじりのツールなど、園芸を楽しむためのグッズも豊富に取り揃えています。

また、砂場やブランコなど子どもの遊び場、寄せ植えなどのワークショッププログラムが用意されており、施設内のファーマーズキッチンで有機栽培野菜を使った食事を楽しむことができるなど、一般的な園芸店とは異なった、ショッピングに止まらない体験施設となっているところも「the Farm UNIVERSAL」の大きな特徴です。

さらに、ファーマーズキッチンの横に併設された「おにわのそうだんしつ」コーナーでは、庭木の選び方やプランニング、そしてデザインや造園工事まで、庭づくりに関するさまざまな相談に専門のスタッフが応えてくれます。

広い店内には、常時10人ほどのスタッフが植物の手入れをしながら働いています。「どんな質問もお悩みもお気軽に声をかけてください。植物が好きなスタッフばかりなので、木の選び方や育て方、プランターとの相性などご相談に乗りますよ」と海老沼さん。ホームセンターとは一味違うおしゃれな店舗は、まさに植物のライフスタイルショップ。宝探しのように植物選びを楽しめるガーデンセンターです。

店鋪情報

住所 千葉県千葉市稲毛区長沼原町731-17 フレスポ稲毛 センターコート内
電話 043-497-4187
営業時間 平日:10:00〜18:00
土日祝:10:00〜18:00
定休日 不定休

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