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暮らしのアイデア
防災を考えた住まいづくり
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台風や線状降水帯など、気候変動によってこれまでは考えられなかったような激しい自然災害が日本列島を襲うようになってきました。過去の被害から何を学び、住まいづくりにどう生かすべきか。京都大学防災研究所の丸山敬さんに、被害が大きくなりやすい住まいの特徴と防災や減災につながるポイントについてお話を伺いました。
今後、日本に接近する台風の数は減るが、猛烈な台風は増加傾向に
気象庁気象研究所などの予測では、今後、日本に接近する台風の数は減っていくが、猛烈な台風が接近する数は増加すると見込まれています。さらに、これまでと違うのは、接近時のコースが、現在よりも東に寄ると予測されていることです。
その兆候はすでに現れていて、2016年には台風10号が東北地方に上陸。2018年の台風12号は、太平洋の沿岸に東から接近するという異例のコースを辿りました。2019年の千葉県を中心に関東一帯に猛威を振るった「令和元年房総半島台風」は、まだ記憶に新しいところでしょう。台風といえば、九州地方や沖縄、四国や近畿地方などの西日本のものだというこれまでの常識は通用せず、大きな被害がこれまで少なかった関東や東北地方では備えが不十分であると考えられるので、今後は全国的な台風被害を防ぐ対策が求められます。
強風被害を減らすには、「ものを飛ばさないこと」と
「飛んできたものから守ること」
日本では台風や竜巻などの突風により、強い風が吹きますが、被害の多くは、やはり台風です。木造住宅の強風被害を受ける部分の大半は、屋根、窓などの外装材です。強風被害を減らす方法は、大きく分けて二つあります。一つ目は「ものを飛ばさないこと」。二つ目は「飛んできたものから守ること」です。
まず、ものを飛ばさないためにはどうしたらよいか考えてみましょう。屋根は強い風に晒されているため、屋根葺き材がよく飛ばされます。昔ながらの木造住宅の場合、屋根に付けた野地板に接着剤代わりに土を載せる「土葺き」で、瓦を屋根に留めて付けていないため、約30m/秒程度の風で飛んでしまいます。台風で瓦が飛ぶと言われている場合のほとんどが、この古い「土葺き」の和瓦ですが、近年は、法令やガイドラインが整備され「土葺き」の屋根は減少しています。一方、1枚ずつ留めつける洋瓦やスレート葺きは簡単には飛びませんが、釘や針金が錆びるなどして弱くなった部分から剥がれることがあります。
また金属板葺きは、金属板全体が剥がれて飛ぶことがありますので、周囲の建物に大きな被害をおよぼす可能性があります。屋根はふだん目に付きにくい部分だからこそ、経年劣化がないかどうか、定期的な点検とメンテナスが必要になってきます。
飛来物の被害を最も受けやすいのは、開口部。
窓ガラスの割れには、要注意!
次に、飛んで来たものから建物を守ることを考えてみましょう。被害を最も受けやすいのは、開口部、つまり窓です。窓に飛来物が衝突すると、窓ガラスが割れて大きな開口が生じます。そうなると危険なのは、窓ガラスの破片だけではなく、開口から一気に空気が入り、建物内の気圧が上昇して天井や屋根が外側に押され、屋根全体が吹き飛んで、住まいが半壊する恐れがあることです。窓の損傷を想定する場合には、屋根の柱や梁への緊結にも気を配る必要があります。
また、こうした風の力を考える場合、風速の平均値はあまり役に立ちません。なぜなら、自然の風には強弱や風向の変化があって乱れており、瞬間風速の最大値は平均値の1.5倍以上になるからです。たとえば平成30年の台風21号では、風速の平均値は40m/秒近くでしたが、瞬間値は60m/秒近い突風が吹きました。風圧は、風速の2乗になるため、この場合、瞬間的に1uあたり和瓦を70枚以上飛散させる程の力が加わることになります。
飛来物から住まいを守るには、雨戸やシャッターなども効果的
強風時には、石ころはもちろん、道に落ちた木なども外壁を貫通するほどの強度をもつことがあります。そのため外壁材には、衝撃力に強い金属系や窯業系サイディングを選ぶとよいでしょう。窓ガラスには強風に対して割れない強度を持ったガラスを用いるのは当然ですが、飛散物が当らないにように雨戸やシャッター、格子などの覆いを付けることも重要です。散乱したガラス片でケガをすることが多く、台風による負傷者のほとんどが割れたガラスによるものです。
近年、とくに都市部では、デザイン性から開口部に雨戸やシャッターなどを取り付けないケースが増えてきています。しかし、前述のように飛散物が当たり、ガラスが割れて人を傷つける場合があるので、割れてもガラス片が飛び散りにくい「合わせガラス」や、破片が小さく粉々になる「強化ガラス」などを採用すると、怪我を減らす効果が期待できます。また、ガラスの強度は充分であっても、サッシの強度が弱いと枠から壊れ、結果としてガラスが割れてしまう場合があります。錆や腐食などで劣化した古いサッシは、交換しておくとよいでしょう。
「防水」と「雨仕舞い」の組み合わせで
住まいの雨漏りを防ぐ
台風だけでなく、気候変動による線状降水帯の豪雨被害も増加傾向にあります。土砂崩れや洪水などの被害は甚大になりますが、住まいに関わる身近なことでいえば、雨漏りの可能性が高まります。雨漏りを防ぐには、住まいの「防水」と「雨仕舞い」の二つを考えてみるとよいでしょう。「防水」は、文字通り屋根や外壁などを防水効果の高い材料で施工すること。「雨仕舞い」は、雨漏りの可能性が高い箇所に、雨水を近づけないようにすることです。たとえば、軒の深い住まいでは、外壁に雨水や風が当たりにくく、雨漏りだけでなく、汚れや経年劣化なども防ぐことができます。一方、デザイン性の高いフラットな陸屋根などは、雨水の影響を直接受けやすいので、屋根や外壁材などの防水性能だけに頼ることになります。豪雨から雨漏りを防ぐには、「防水」と「雨仕舞い」という2つを上手に組み合わせて住まいづくりを考えてみるとよいでしょう。
台風の二次被害で怖いのは、停電や断水。都市部では長期化の恐れも
台風による二次災害で怖いのが、電力施設の被害による停電です。送電鉄塔や配電柱の折損や倒壊は、日常のエネルギー源のほとんどを電気に頼っている私たちの生活に致命的な打撃を与えます。風力による電柱の被害は、瞬間風速が約60m/秒を越えると出始めますが、直接加わる風力の他に、倒木や様々な飛散物が衝突することによっても起こり、瞬間風速が約60m/秒以下でも発生し始めます。2019年の「令和元年房総半島台風」では、推計で約2000本の電柱が損傷し、千葉県と神奈川県を中心に約93万戸で停電が起きました。都市部で強風被害が起こると被害は広範囲になり、復旧にも相当な期間が必要となります。同台風では、2週間以上にわたり停電が続いた地域もあり、冷凍・冷蔵庫などが使えず、食品を廃棄せざるを得なくなりました。また、忘れてしまいがちですが、停電になると断水が起きます。浄水場から家庭に送るポンプが停電で使えなくなってしまうこともあり、同台風の被害による断水は、最大で14万戸にも及んでいます。住まいでできる対策は限られますが、ソーラーパネルや蓄電設備を備えるなど予備電源を確保したり、近隣や居住地域ごとの対策も必要になってきます。また、水は飲料用だけでなくトイレを流すにも必要になりますので、台風接近時には、お風呂に水を溜めておく習慣をつけておくとよいでしょう。
地震や台風などの災害に強い、軽さと頑強さ、防水性を備えた屋根材「ROOGA」
地震や台風の強風や漏水などから住まいを守るため、ケイミューが開発した屋根材が「ROOGA」です。「ROOGA」は一般的な瓦の約1/2という軽さで、地震時の建物の揺れ幅を小さくし、建物にかかる負荷も軽くします。
台風の強風でも、対角の2点を釘留めしているため飛散しにくく、飛来物が当たっても、素材自体が持つ粘り強さによって割れにくい屋根材です。万が一割れても破片が飛び散りにくく、被害を最小限に抑えることができます。また、屋根材裏側への水の侵入を抑える形状で、住まいの漏水を防ぎます。