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暮らしのアイデア
混ぜるだけ、炒めるだけ、煮込むだけ。簡単作り置きメニューで楽しむ、魅惑のスパイス
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コリアンダーにクミン、ナツメグ、シナモン。スパイスカレー人気の定着やコロナ禍をきっかけに料理にこだわる人が増えたことから、本格的なスパイスがスーパーで手軽に手に入るようになりました。奥深いスパイスの世界を手軽に味わえるレシピを、専門店を営む佐藤輝美さんに教えていただきました。
インドの食卓にはスパイスが欠かせない
浅間連峰や八ヶ岳を望む長野県小諸市で、スパイス料理と紅茶の専門店「te te do(テテドゥ)」を営む佐藤輝美さん。自身のルーツを築いたのが、一年の半分をインドで暮らしていたという30代の経験です。
「東日本大震災をきっかけに東京で暮らすことが不安になって、仕事を辞め、旅行で訪れたことのあったインドに渡ってアーユルヴェーダを学びました。現地でできた友達の実家が北インドにあって、行ってみると風景も気候も、不思議なくらい故郷の長野に似ていたんです。なんだか肌に合って、それからお金を貯めては一年の半分をインドで暮らす生活を6年ほど続けました。ヒマラヤ山脈のふもとにある友達の実家にホームステイして、お母さんの料理や洗濯を手伝ったり一緒に山に登ったり、家族の一員のような普通の暮らしを送りました」

店舗やイベントではスパイスをオリジナルで調合したカレーを提供しています。スパイスを使った副菜も美味。【写真:石井妙子】
言葉はほぼ通じない状態(!)ながら「みんなが何を話しているか分からないから、かえって気楽だった」となんともおおらかに話す佐藤さん。毎日ホームステイ先の台所を手伝ううちに魅せられていったのが、インドの家庭料理でした。現地の食卓に欠かせないのがスパイス。カレーはもちろん炒め物や漬物などあらゆる料理に使われ、日本にはない複雑な奥行きを生み出していることを知りました。
「材料や調理方法は変わっても、味付けは基本的にスパイスと塩。日本で醤油やみりんを使う感覚に近いと思います。インドの家庭では、普段使いのスパイスを7種類ぐらいボックスに入れて常備している風景をよく見かけました。特に出番が多いのはカレーにも使われるターメリック、コリアンダー、クミン。辛みを足したい時は、唐辛子を乾燥させたチリパウダーも使います」

インドで売られているスパイスボックス。ステンレスの容器によく使うスパイスを入れて台所に常備しておくそう
「インドは日本のように料理のジャンルは多くなく、家庭でパスタや中華を食べることはまずありません。その地域でとれる旬の食材を使って、スパイスで多彩なバリエーションを作り出す。私が大好きなインドの漬物アチャールも、豆や野菜といったシンプルな素材に色々なスパイスを組み合わせて、各家庭の好みの味に仕上げます。そうしたスパイスの自由な使い方を教えてほしいと頼まれるようになって、日本に帰ってからスパイスの料理教室を始めました」

風が気持ち良く吹き抜ける「te te do」店内(不定期営業のため営業時間はInstagramで確認を)
調味料の一つとして気軽にスパイスを使ってみる
まずは入り口としてスパイスに親しんでほしいと、料理教室だけでなくワークショップスタイルのレッスンも開講。例えば「発酵キャベツ」(レシピは次の章で紹介)のレッスンでは参加者が5種類のスパイスを実際に味見し、特徴や効能を知った上で、それぞれを使った発酵キャベツを食べ比べるという内容。スパイスの幅広さ、個性豊かな味わいを実感できます。
スーパーのスパイス売り場に行くとバラエティ豊富でどれを選べば良いか迷いますが、「まずはピンとくるものを選んで、いつもの料理に調味料として加えてみると新鮮な味を手軽に楽しめます」と佐藤さんは話します。
「例えば香りが強く清涼感があるクミンシードは、野菜炒めやキャロットラベ、塩きんぴら炒めなどシンプルな料理のアクセントに。マイルドな辛みがあるマスタードシードはポテトサラダやドレッシング、炒め物に入れるとプチプチとした食感も楽しめます」

左/店内ではスパイスや乾燥豆の量り売り、カレーキットの販売も
右/食器や雑貨、インドの伝統的な刺子「カンタ」など布小物も販売
迷ったらおすすめなのが、複数のスパイスがブレンドされた市販のカレー粉。チャーハンや炒め物はもちろん、肉や魚にまぶして焼いたりドレッシングに入れたり、幅広く応用できます。メーカーによって味が違うので、好みのものを見つけると良いのだそう。
「意外にカレー粉に合うのがヨーグルト。塩とカレー粉を入れたヨーグルトソースを魚や肉のソテーやサラダに合わせると、さっぱりしておいしいです。インドではヨーグルトは調味料やドレッシング代わりに使うことが多いんですよ」
シンプルな素材にひと振り加えるだけでいつもと違う味に仕上げてくれるスパイスは、実は時短の味方でもあります。簡単な手順ながらスパイスでぐっと味わいを深める、作りおきに便利なメニューを教えてもらいました。

ローリエやクミン、レッドチリなどのハーブとスパイスを組み合わせて豊かな味わいに

インドで親しんだ紅茶も輸入販売。こちらはハーブや果物などを使用したコーディアルシロップをアイスティーで割った「ティーコーディアル」
Recipe
@“あと一品”に便利!混ぜるだけの「発酵キャベツ」

キャベツ+塩のオーソドックスな組み合わせに、好みのスパイスを足すだけ。乳酸発酵によるさわやかな風味とスパイスの味わいを楽しむ手軽な一品です。常備菜や付け合わせとしてはもちろん、料理の具材にしても。今回は色鮮やかな紫キャベツを使いましたが、通常のグリーンキャベツでもOKです。
■材料(4人分)
キャベツ 1/4玉
塩 小さじ1(キャベツの重さの2%)
好みのスパイス 小さじ1/2(キャベツの重さの1%) ※クミン、ブラックペッパー、フェンネル、キャラウェイなど
ローリエ 1枚
好みで唐辛子 1本 ※辛さが苦手な場合は入れなくてもOK
■作り方
1.キャベツは千切りにする。
2. ポリ袋かジッパー付き保存袋に1.とスパイスとローリエ、唐辛子、塩を入れる【写真左】。
3.袋の上から揉み込むと、キャベツから水分が出てくる【写真右】。
4. 袋の空気をできるだけ抜き、常温で半日~1日置いて発酵させる。キャベツが水分に浸かっている状態にしておくと発酵が進み、かつ傷みにくい。
5.細かい泡が出てきたら発酵のサイン。冷蔵庫に入れて保存し、3日ほどで食べ切る。

左/ポリ袋かジッパー付き保存袋に材料を入れる
右/袋の上から揉み込む
■アレンジのヒント
「刻んでポテトサラダや卵焼き、スープなどに入れてもおいしく食べられます。肉と一緒に炒めてメインおかずにも。細かく刻んで、カットしたゆで卵とマヨネーズで和えればタルタル風ソースに。お椀に入れて味噌汁を注ぐと、一風変わったお味噌汁になりますよ」
A季節の野菜で作るカラフルな常備菜「スパイス入り季節のマリネ」

マリネ液にスパイスとハーブを足して香り豊かに。簡単に作れるので、多めに作って常備菜にしておくと季節の野菜をたっぷり食べられるうえ食卓が華やぎます。香ばしいアーモンドの風味と食感もポイント。
■材料(4人分)
ズッキーニ 2本
ピーマン 2個
ミニトマト 5個
※野菜は季節のものならなんでもOK
ニンニク 1/2片
アーモンド 10粒
★オリーブオイル 20ml
★ビネガー 10ml
★好みの乾燥ハーブ 小さじ1/2 ※タイム、ローズマリー、ミントなど
★好みのスパイス 小さじ1/2 ※フェンネル、キャラウェイ、ブラックペッパーなど
★塩 適量
★ドライトマト 適量
■作り方
1. ニンニクを細かく刻む。野菜は一口大に切る。
2. ★を混ぜてマリネ液を作る【写真右上】。
3. フライパンにオリーブオイル(分量外)を入れてニンニクを熱し、香りが出たら野菜を炒めて火を通す【写真左下】。
4. 3.とアーモンドを2.に入れて和える【写真右下】。
5. 1~2時間冷蔵庫で冷やし、味がなじんだら完成。

左/材料。今回はワインビネガーを使用
右/マリネ液を作る

左/フライパンでニンニクを炒めてから材料を両面焼き、火を通す
右/マリネ液で炒めた野菜とアーモンドを和える
■アレンジのヒント
「薬味がわりに冷奴やそうめん、冷やしうどんに乗せてもさっぱりといただけます。冷製パスタもおすすめ。カレー粉を足してコクを出しても」
Bスパイシーで甘すぎない「ジンジャーエール」

子どもにも大人にも人気のジンジャーエールをスパイスから手作り。煮込むだけで手軽に完成します。ジンジャーなどのスパイスのおかげで夏は疲れを癒し、冬はホットで飲むと体を温めてくれます。te te doでは、材料のスパイスがセットになったキットを販売しています。
■材料(約10杯分)
水 300ml
砂糖 200g
レモン汁 大さじ1
★乾燥ジンジャー 4g
★カルダモン 6粒
★クローブ 3粒
★シナモン 1片
★ブラックペッパー 10粒
★あればスターアニス 1粒
■作り方
1. 水に★をすべて入れ、沸騰したら砂糖を加えて弱中火で約15分煮る【写真右】。
2. レモン汁を加える
3. 茶漉しでスパイスを濾して、シロップ完成。
4. シロップ30mlを炭酸水180mlで割る。お湯で割ってホットジンジャーにしてもおいしい。

左/材料のスパイス。上から時計回りにクローブ、カルダモン、ブラックペッパー、シナモン、スターアニス、乾燥ジンジャー
右/沸騰後、砂糖を加えて弱中火で約15分煮る
ショップ情報
te te do
住所 | 長野県小諸市菱平1904-6 |
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営業時間 | 不定期営業のため、スケジュールは Instagramで確認を。 |
